またまた韓国クラブの裏話をしてみようと思います。
これまでに数本のコラムで韓国クラブの裏側を紹介してきましたが、それらはれっきとした犯罪行為や反社会的勢力の存在を描いたものでした。
しかし今回は、そういった明らかに非合法なものではなく、その陰でこっそり私腹を肥やす、ちょっとたちの悪い公務員の話を紹介してみたいと思います。
〝坊主と葬儀屋〟を名乗る二人組
久々に大阪N町の韓国クラブ「L」を訪れた私。お気に入りの中国人ホステス「アイカ」の艶めかしいボディーを眺めながら目の保養でもしようと思ったのですが、あいにく彼女は中国に一時帰国していて、2週間後に戻って来るということでした。
いつものようにカウンターに座ると、マスターにビールを注文しました。
L字形のカウンターには先客がふたりいて、40代と50代くらいのサラリーマン風でしたが、どこかで見たことのある顔だなあと私は思いました。ルイという源氏名の若い日本人ホステスが、カウンター越しにふたりと談笑していました。
私の隣にはチーママの韓国人が座ってくれました。この店ではおそらく彼女が一番美人で、スタイルも抜群です。顔も体もあちこち整形しているという噂でしたが、それでもスタイル抜群の美女と肩を触れ合いながら酒を飲めるというのは、男としては嬉しいものです。
8時を過ぎて客足が増えてくると、チーママはボックス席の常連客のほうへ行ってしまいました。サラリーマン風のふたりが席を立ち、見送りに出て行った日本人ホステスのルイが、戻って来ると私の隣へやって来ました。
「わたしとは初めましてですよねえ?何度かお見かけしたことはあったんですけど…」
「そうそう。意外といっしょになる機会がなかったんだよねえ」
徐々に会話が弾むようになってくると、ルイは飲み物をねだり始めました。
さらに「お腹すいてないですかぁ?わたし昼から何も食べてないんですぅ」と言い、やたらとスキンシップをはかるようになりました。仕方なく、たこ焼きを二人分注文してやることにしました。
食べ物は近隣の店から出前を取るかたちになりますが、その点このクラブは良心的で、出前に対するサービス料は一切請求されません。私はたこ焼き代500円×2=1000円を支払うだけで済みました。
たこ焼きの出前を待っているあいだ、私はさりげなく、先ほどのサラリーマン風の二人組のことをルイに聞いてみました。
「ああ、あの人たち、お坊さんと葬儀屋って言ってましたよ」
「ええっ、坊主と葬儀屋?」
「法事や葬式のときは声かけてって。安くしとくからって」
なんか怪しいなあ…。私にはどうしても、あのふたりが坊主と葬儀屋には思えませんでした。
たしかに片方の50代くらいの男は坊主頭でしたが、寺の住職という雰囲気ではありませんでした。どことなく学校の教師とか…そんな感じに見えました。
葬儀屋のあとをつけて行ったら、そこに坊主がいた!
その日の午前中、私は大阪府内のとある役所内にある保健センターを訪れました。
当時、風俗通いばかりしていた私は、ちょっと気になることがあり、いちど性感染症の検査を受けてみることにしたのです。保健センターではHIV、梅毒、クラミジアの検査を無料で、しかも匿名で受けることができるようになっていました。
検査を終えて役所の建物から出たところで、見覚えのある人物とすれ違いました。
「あっ、葬儀屋!」
葬儀屋は足早に役所の中へと入って行きました。私は慌てて踵を返すと、後を追いました。
着いた先は、保健センターがある階でした。葬儀屋はフロアいちばん奥の○○課のほうへと歩いて行くと、窓口の中へと姿を消しました。
私は窓口の前を通り過ぎざま、職員がデスクを並べているほうへちらっと目をやりました。
すると、そこに坊主の姿があったのです。
葬儀屋がどこにいるのかはわかりませんでしたが、坊主はいちばん奥の一人がけの大きなデスクの前にでんと座っていたのでした。おそらく課長クラスなのでしょう。何をするでもなく腕を組み、口を真一文字に結んで正面を向いていました。
坊主と葬儀屋の正体を突き止めた私は、にわかに嬉しくなり、軽い足取りで役所を後にしました。1週間後、検査結果を聞きに保健センターを訪れたときには、坊主と葬儀屋ふたりそろってデスクに座っている姿を確認することができました。
また、以前どこであのふたりを見かけたのかも思い出しました。
韓国クラブ「L」と同じN町にある、フィリピン人のママがやっているショットバーに客として来ていたのでした。人身売買ブローカーの男に話しかけられ、恐怖に顔をひきつらせていたのが、たしか坊主のほうだったと思います。
坊主と葬儀屋の悪だくみ
「坊主と葬儀屋」とは何ともうまい組み合わせ。
彼らは自分たちが役所の人間であることを隠し、韓国クラブの人脈を利用して小金稼ぎをしていたのでした。
あるとき韓国クラブ「L」を訪れると、坊主と葬儀屋がいちばん奥のボックス席に陣取り、何やら嬉しそうに口もとを緩め、密談の最中といった感じでした。
彼らといっしょにいたのは、悪徳行政書士の男でした。
後日、中国人ホステスのアイカから聞いた話によると、クラブのホステスや、役所の窓口へ生活支援の相談に来た外国人に、悪徳行政書士の男を紹介しているそうでした。
役所には提携している行政書士がいるはずですが、そういうまっとうな仕事している士業の人がやりたがらないような案件を、悪徳行政書士の男のところへ持って行き、いくらかの紹介料を受け取っているという話でした。
アイカは悪徳行政書士の男とも同伴することがあり、本人の口から聞いた話だから間違いないと言いました。
また、葬儀屋の男は、たまに自分の財布ではなく、カバンの中から封筒を引っ張り出してきて、そこから紙幣を何枚か抜いて支払いをすることがあるのだとも言い、封筒にはかなりの枚数の紙幣が入っていて、なんだか怪しい気がしたと、アイカは声をひそめました。
したたかな面々
2か月後、アイカと同伴で「L」を訪れたとき、またしてもあのふたりの姿がありました。
カウンター越しに新入りのフィリピン人ホステスと会話する坊主と葬儀屋。1時間ほどしてふたりが帰り支度を始めたとき、アイカが言っていたことが正に目の前で起きたのでした。
坊主が先に席を立つと、葬儀屋が支払いをするためにカバンを開けました。
彼は財布ではなく集金袋のような茶封筒を取り出すと、その中から紙幣を何枚か抜いてマスターに渡しました。
ふたりが店を出て行くと、アイカが声をひそめて言いました。
「このまえ見たとき、お札がこれくらい入ってました」
アイカは指で厚さを示して見せました。その通りならけっこうな金額でしょう。
「もしかして市民の税金を使い込んでるんじゃないやろなあ…」
私は溜め息をつきました。
韓国クラブの裏側にはびこっているのは、ヤクザや闇金業者といった裏稼業の面々ばかりではありません。カタギの人間、しかも公正中立の立場であるはずの公務員が、このようなあくどいやり方で利益を得ていることもあるのです。
こういうあくどい連中がいると思うと業腹ですが、いっぽうで、そういう連中を頼ってでも狡賢く生きようとする外国人女性たちが、韓国クラブのようなところには少なからずいます。なんともしたたかな世界だなあと、思わずにはいわれません。