昭和の哀愁漂う女子高生もののAVシリーズ。濱竜二監督が描く『絶望エロス』の魅力に迫る!

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昭和の哀愁漂う女子高生もののAVシリーズ。濱竜二監督が描く『絶望エロス』の魅力に迫る!

AV名作劇場

なかぞの 0 4,011 2019/12/13

私がこれまでに購入したAVソフトや、ダウンロードした作品の大部分はストーリーものです。ただ単に男女の絡みを見ているだけでは、いまいち想像力が刺激されず興奮しないことがあり、どうしてもストーリーに頼りがちになります。
 
登場人物の関係性と、そこから生まれる物語に興味が湧いて初めて、絡みのシーンでも興奮できるようになります。どうやら私はそういうタイプの人間のようです。
たまに、普通に映画やドラマを見るような感覚でAV作品を見てしまうことがあり、とくにストーリーの面白さにはまってしまうと、いちども抜かずに終わるということもあります。
 
今回は、私がこれまで見てきたAV作品の中でも、とくにストーリーがしっかりと作られていて、しかも抜きどころもちゃんとおさえた、ドラマ仕立てのシリーズをご紹介したいと思います。昭和のにおいがぷんぷんする、女子高生もののレーベルです。

『絶望エロス』の見どころ

『絶望エロス』レーベルが発足したのは2016年。その年の7月に第一弾の作品がリリースされ、2018年3月までに40を超えるタイトルが発表されています。
 
このシリーズの見どころは、登場人物の人間関係と、そこから生まれるストーリーが色濃く描かれているところです。
 
登場人物個々のキャラクターがしっかり確立されているおかげで、プロット(展開)を楽しませるだけにとどまらず、一つ一つのシーンをたっぷり味わうことができます。
作品1本あたりの時間は90分~115分くらいのものが多いですが、ダラダラとした感じはなく、各シーンごとのメリハリがきいていて、最後まで飽きずに見ることができます。
 
オナニーのおかずとしてAVを見る人がほとんどだとは思いますが、この『絶望エロス』シリーズなら、最後まで〝抜かずに〟楽しむことができるかもしれません。
映画やドラマを見るような感覚で、いちど最後まで作品を楽しんだあと、もういちど見直しながらオナニーをするのもいいかもしれません。

「絶望の向こう側の希望」

『絶望エロス』シリーズでは、一貫して〝絶望の向こう側の希望〟というテーマが描かれています。
 
シリーズ全作品に女子高生が登場しますが、彼女たちが置かれている立場は様々です。
裕福な家庭に育ちながらも、家族が引き起こしたトラブルに巻き込まれ、自殺を考えるまで追い込まれてしまう子もいれば、学校の担任教師や部活の顧問と男女の関係になってしまい、泥沼のような状態から抜け出せないまま破滅に向かっていく子もいます。
 
彼女たちは絶望的な状況から何とかして抜け出そうと、もがき続けます。
一見、楽観的であったり、したたかに生きているように見えて、常に心の奥にある闇に押しつぶされそうになっています。
しかし、そんな中でも彼女たちは人間的な芯の強さを見せ、絶望の淵を越え、やがて希望を抱くようになります。
 
強い力に翻弄され、流されながらも、その先にある希望の光に向かって強く生きて行こうとする少女の姿を描いたのが、この『絶望エロス』シリーズなのです。
 
2016年に『絶望エロス』レーベルを立ち上げ、これまで40を超える同シリーズ作品を手掛けてきたのは、テレビ制作の世界からAV業界に転身した経歴を持つ濱竜二監督。
濱監督は、家族の死に直面したことで人生に疑問を抱き、いちどは映像の世界から引退することまで考えたほどモチベーションを失ったことがあったそうですが、奥さんに励まされ、心機一転、AVの世界に足を踏み入れたといいます。
 
昭和エロスの巨匠として知られるヘンリー塚本監督率いるFAプロに入社した濱監督。
ヘンリー塚本監督のもとで2年、さらに「ながえSTYLE」の設立者である、ながえ監督のもとでも2年、助監督として経験を積み、2012年に監督デビューを果たします。
 
ふたりの名監督から昭和エロスの遺伝子を受け継いだ濱監督は、2016年に自身のレーベル『絶望エロス』を設立し、ヘンリー塚本、ながえ両氏とは、またひと味ちがった昭和エロス作品を手掛け、注目を集めるようになります。
 
『絶望エロス』というインパクトのあるネーミング。そして〝絶望の向こう側の希望〟というテーマは、どのようにして生まれたのでしょうか。
 
「人生に絶望している少女は最終的に何を求めるのか?」という話を仲間うちでしたとき、たどりついた答えが、「人肌の温もりなんだろうな。金じゃなく人なんだ」というものだったと話す濱監督。
 
「私はVシネ『ミナミの帝王』で竹内力演じる萬田銀次郎の『下ばっかり見てても地獄しか見えないぞ』というセリフが好きで、絶望の淵から這い上がろうとする少女が人の温もりを求める物語、そしてそこにあるエロスを描きたい、これが『絶望エロス』の始まりです」と語っていました。
 
家族の死に直面し、人生に疑問を抱くようになった監督自身の内面から湧き出てきたテーマであるように思えます。

名作ぞろいの『絶望エロス』シリーズ

私はこれまでにリリースされている全タイトルのうち数本を除いてほとんどの作品を見ていますが、どれも秀作ばかりです。
AV作品であるまえに、映像作品としての質が高く、オナニー目的でなくともじゅうぶん楽しめるものばかりです。
 
濱竜二監督の師匠ともいえる巨匠・ヘンリー塚本監督は、インタビューでこのように語っています。
「僕は自分の作品はAVではなくポルノだと思っているんですが、ポルノには品がある。物語がある。人間にとって性というものは必要なんだ、まさに人間の性(さが)なんだ」。
 
この、ポルノが持つ品格と物語性が、濱監督の『絶望エロス』シリーズには脈々と受け継がれているように感じられます。
 
濱監督はインタビューの中で、「監督は、女優が決まってからストーリー作りを始めるんですか?それともストーリーが先にあって、そこにハマる女優を探すやり方ですか?」と聞かれた際、「女優さんが先ですね。キャスティングに関しては、市場で売れてるとか、ギャラの面とかいろんな要素が絡んできますけど、自分が一番大事にしてるのは、その子を面接してバックボーンなどを聞いたりして、自分がその子自身を愛せるまでになるかどうかです。でないと物語は浮かびません」と語っていました。
 
女優さん自身の内面がしっかりと物語の中に溶け込んでいて、それがそのまま映像となって表現されているところに、視聴者は惹きつけられるのかもしれません。

私が選ぶ『絶望エロス』シリーズベスト3

私がこれまでに見た中で、女優さん(他の出演者)の演技、ストーリー、映像、エロ、すべての点で印象に残っている作品を3つ、ご紹介したいと思います。


絶望エロス 誘拐されて、犯●れて、家出して、また犯●れて(広瀬うみ)

私がいちばん最初に見た『絶望エロス』シリーズの作品です。
主人公の少女を演じる広瀬うみさんの演技が、奥行きがあってすごくいい味を出しています。絡みのシーンでもAVぽいわざとらしさが少しもなく、見ていて興奮するというより、感傷的になってしまう感じさえあります。
 
主人公の少女は裕福な家庭で何不自由なく育ちますが、父と兄が起こした仕事上のトラブルがもとで、取引相手の男たちから怨みを買うことになります。父は自宅に監禁され、激しい暴行を受けます。そのとき家に居合わせた少女も強姦され、挙句の果てに父との近親セックスを強要されてしまいます。
 
事件のあと母は失踪、父は自殺。少女は誰の子かわからない子を妊娠し、家を出ます。
母方の親戚に身を寄せるも、そこでも強姦の被害に遭ってしまう少女。
絶望の淵に立たされた少女は、歩道橋の上から飛び降りて自殺を図ろうとします。
しかし、たまたま通りがかった中年の男に助けられ、それがきっかけで男との奇妙な共同生活が始まります。
 
中年の男を演じるのはAV男優の染島貢さん。この男優さんは本シリーズにかなりの頻度で出演していますが、いつ見ても味のある人だなあと思います。スキンヘッドで一見コワモテですが、生真面目な役からコミカルな役まで幅広くこなせる、人間味あふれる演技をする男優さんです。
 
染島さん演じる謎の中年の男は、共同生活の中で少女と体の関係を持つだけにとどまらず、売春のあっせんにまで手を出し、少女に客を取らせるようになります。
そのいっぽうで少女に対して父親のような一面も見せ、少女のほうもそれを受け入れ、ふたりの奇妙な共同生活は破綻することなく続いていきます。
 
絶望を味わい、いちどは自殺まで考えた少女が、中年の男との共同生活の中で少しずつ希望を見出していくのです。



絶望エロス 女学生、3 女学生と男友だち 乱交SEX時代 あたし白い下着はもう似合わない 加奈子18歳の秋(星咲伶美)
 
シリーズの中でもとくに女優のエロさが際立っているのが、この作品ではないかと思います。主演の星咲伶美さんは、決して美人ではありませんが、絡みのシーンで見せる官能的な美しさはピカイチです。もちろん、監督による演技指導や演出の効果もあるとは思いますが、見ていて無性に情欲をそそられるものがあります。
 
父親のように慕っていた部活の顧問の教師から乱暴され、心に傷を負った主人公の少女は部活を辞めて不良たちとつるむようになります。
あるとき、その顧問の教師が、友人である女子生徒に手を出したという話を聞き、不良たちとともに顧問の教師を脅迫します。
 
部屋に監禁され、不良たちのセックスを見せつけられて目を伏せる顧問の教師。
しかし、そのとき少女が見つめていたのは、他ならぬ顧問の教師でした。
その後、徐々に信頼関係を取り戻していくふたり。
 
ラストシーンでは、高校を卒業したと思われる私服姿の少女が、雨の中、顧問の教師を待つ姿が映し出されます。なぜか少女の右手には包帯が巻かれています。
顧問の教師にプレゼントを渡す少女。受け取った小さな箱を開けて驚愕する教師。
箱の中に入っていたのは、少女の人差し指でした。
 
教師は慌ててそれを返そうとしますが、少女は受け取らず、「大切なものだから先生にもらってほしい」と言います。教師に対する愛情の証を示したということなのでしょうか。
怖くなった顧問の教師は、その場から逃げだしてしまいます。
 
シリーズの他の作品と比べると絡みのシーンは短めですが、女優の星咲伶美さんの演技が、とにかく官能的で、じっと見ているだけで我慢汁が溢れ出てくるかもしれませんよ。


絶望エロス 家出少女さんのお仕事(北川ゆず)
 
主演は北川ゆずという女優さんですが、彼女の他の作品では決して見ることのできない、素朴でリアルな演技が堪能できます。
部屋着姿で過ごすシーンでは生活感がしっかりと出ていて、AVを見ている感じがしません。
この部屋着姿の彼女が、なぜかものすごくエロく見え(ぜんぜんエロい服装ではないのですが)、セックスしていなくても、見ているだけで興奮してしまいます。
 
あらすじについては、あえて触れないことにしますが、とにかく女優さんの魅力をたっぷり味わえる作品です。
セーラー服姿に眼鏡をかけて登場するシーンでは、少しおどおどしていて、どことなくオタクっぽい雰囲気がなくもないですが、眼鏡をはずすと印象はガラッと変わります。このギャップも見どころのひとつかもしれません。
 
絡みのシーンでは、大きな喘ぎ声などもなく、非常にひかえめな演技をしていますが、どこかじっと耐え忍んでいるような感じにも見え、それがかえって見る人の情感を刺激するように思われます。
 
全体を通してやや素朴な印象を受けますが、女優さんの魅力ひとつで成り立っている作品と言ってもいいかもしれません。おすすめの1本です。

見る人の心を浄化する物語

「まず、私と同世代の40代の人にはぜひ見てほしいです。同じように青春時代を過ごして、同じ思い出が共有できる人たちに見てもらいたいです」。
『絶望エロス』シリーズをまだ見たことがないという人たちに向かって、濱竜二監督はこう話していましたが、もちろん若い人たちが見ても楽しめる作品であることは間違いないと思います。
 
昭和を描いたシリーズですから、若い世代の人たちが見ると、最初はジェネレーションギャップを感じることがあるかもしれませんが、映像作品としての質が高く、AVとして見ても抜きどころ満載ですから、きっと楽しんでもらえるのではないかと思います。
  
質の高いある種の物語というのは、見る人の心を浄化する力を持っているものです。
映像作品にかぎらず、漫画やアニメ、小説などもそうです。
〝絶望の向こう側の希望〟という、濱監督自身の経験から生まれたテーマと、主演している女優さんの内面が溶け込んだストーリー性には、何かしら見る人の心を揺さぶるものがあると思います。ぜひいいちど、このシリーズを見ていただきたいです。
 
最後に、私がすごく共感した濱監督の言葉を紹介して、このコラムを締めくくりたいと思います。
 
「ドラマを作るにあたって、自分が楽しかった時代を懐かしんでる部分はあると思います。だから、実はあまりお客さんのためと思って撮ったことはなくて、自分の人生が間違いじゃなかったということをAVを通して必死で訴えている気がします」。

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この記事を書いた人

なかぞの

大阪府生まれ。22歳で文芸同人誌に参加。文学・アート系雑誌での新人賞入選をきっかけに作家業をスタート。塾講師、酒屋の配達員、デリヘルの事務スタッフなど様々な職を転々としたのち、現在はフリーライターとして活動中。足を踏み入れるとスリルを味わえそうな怪しい街並み、怪しいビルの風俗店を探し歩いている。

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