事故物件は本当に怖い!若い女性が自殺した部屋に住んだ友人が辿った末路。

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事故物件は本当に怖い!若い女性が自殺した部屋に住んだ友人が辿った末路。

裏ネタ

なかぞの 0 4,304 2019/11/15

この記事が漫画化されました

YouTubeチャンネル:じんちゅう


「事故物件」で検索してみると、ネット上にはありとあらゆる記事やサイトが出てきます。
 
曰く付きの物件ばかりを紹介するサイトがあったり、実際に事故物件に住んだことがある人が、そこでの生活をレポートしたブログや動画を目にすることもあります。
 
これだけ多くの事故物件に関する情報が出回っていても(出回っているからかもしれませんが)、実際にそういった物件に足を踏み入れたことがある、住んでみたことがあるという人はごく少数ではないでしょうか。
 
私はこれまでにいちどだけ、事故物件を訪れたことがあります。
ある友人が引っ越しをするということで、物件探しに同行したときのことでした。
 
不動産屋さんに案内され、その部屋を内見した私は、友人に「ここは絶対にやめておけ」と忠告しました。しかし彼は、極端に家賃が安いことと、怖いもの見たさで、その部屋に住むことに決めてしまったのでした。

家賃1.8万円!超激安物件の謎。

私が友人Aの物件探しに同行したのは、まだ肌寒さが残る3月下旬の、ある日曜日の昼下がりのことでした。
 
大阪市内の、JR線のとある駅前の不動産屋を訪れた私たち。
駅から徒歩10分圏内で、家賃5万円以内の物件を探しているというAに、気の良さそうな40代くらいの男性店員は、出し惜しみすることなく大きなファイルを2冊開いて見せてくれました。
 
家賃5万円以内の物件は意外にもたくさんあり、物件情報がすべて写真付きでファイリングされていました。私は色々な物件の写真を眺めているうちにだんだん楽しくなってきて、自分のことでもないのに夢中でファイルを繰っていました。
 
「これ何?めっちゃ安いやん!」
 
友人が声を上げ、私の肩をポンと叩いてきました。
 
彼が指さした物件情報を見て、私も驚きました。駅から徒歩10分で、家賃が1.8万円とありました。しかも共益費込みです。敷金もべらぼうに安く、保証金はゼロ。ワンルームだが広さは8.5畳あり、キッチン、トイレ、ユニットバス、エアコン、クローゼットと、必要なものはすべて備わっています。築年数も25年と、とくべつ古いわけでもありません。
 
「これ、何でこんなに安いんですか?」
 
身を乗り出して聞いたAに対し、店員の男性は首をかしげ、しばし黙り込んだあと、何やら申し訳なさそうな顔で口を開きました。
 
「ちょっと言いにくいことなんですけどねえ…」
 
店員は小声になると、「いわゆる、曰く付きというやつです」と言いました。
 
「ああ、そういうことなんですかあ…」
 
Aは小さく溜め息をつきました。私も思わずうつむいてしまいました。
 
「この部屋で何があったんですか?」
 
恐る恐る聞いたA。見ると、どこか楽しそうな顔つきをしていることに私は気づきました。なんだか嫌な予感がしました。
 
「じつはですねえ…」
 
店員はちょっと困った顔をすると、私たちの他に客はいないにもかかわらず、先ほどよりもさらに声をひそめて話し始めました。
 
1ヵ月前、その部屋で住人の女性が亡くなっていたことがわかりました。首吊り自殺だったそうです。管理会社はその部屋を閉鎖することを家主にすすめたそうですが、家主側が拒否。たとえひと部屋でも家賃収入が少なくなるのは困ると言ったのだとか。
 
死後数日で発見されたため、室内はほとんど汚れていなかったということでしたが、事情を考慮して賃料を大幅に下げざるを得なかったのだといいます。
 
店員の話を聞いた私は少し背筋が寒くなりましたが、Aは少しも動揺した様子を見せず、「その部屋を見せてもらえますか?」と言いました。
 
「やめといたほうがいいと思うけどなあ」という私の言葉を無視し、Aはこれから内見したいので案内してもらえませんかと店員に言いました。
 
「わかりました。ただ、部屋は亡くなったときの状態のままなので、中へ入ってみて、もし気持ち悪くなったりしたら遠慮なく言ってくださいね」
 
店員はそうことわると、「家主さんに連絡入れますので、ちょっとお待ちください」と言い、受話器を取りました。

亡くなったときの状態のまま放置された部屋

不動産屋から歩いて10分ちょっとの大通りに面した場所に、そのマンションはありました。
 
事故物件ということで、辺鄙な場所にある古ぼけた建物をイメージしていましたが、実物は私の想像とはかけはなれた立派なマンションでした。10階建てで、築25年の割には外観は綺麗でした。1階はテナントでスーパーとクリーニング店が入っていました。
 
全室ワンルームのマンションで、長い廊下に同じ色のドアがずらりと並んでいました。
私たちが案内されたのは2階の7号室でした。
 
ドアを開けた瞬間、嫌な臭いがしました。生ごみのような臭いです。店員が土足のまま部屋に上がり、ベランダのサッシを開けに行きました。
 
「靴のままでいいですよ」
 
店員はそう言うと、廊下へ出て、ドアを開け放したままの状態にしました。
 
私はAのあとから恐る恐る足を踏み入れました。
入ってすぐ右手にトイレとユニットバスがありました。その少し奥の左手がキッチンになっていて、生ごみのような臭いはそこから漂ってきていました。
 
「これ見てみ」
 
Aがキッチンの前で立ち止まりました。コンロに鍋が置かれたままで、シンクの中を覗くと野菜のくずなどが無造作に散らばっていました。
 
「うわっ!」
 
鍋のふたを取ったAが声を上げ、顔をゆがめました。鼻をつく強烈な臭いが、一瞬にしてキッチンの周りに広がりました。私は思わず手で鼻と口を覆いました。
 
鍋の底には赤茶色をしたヘドロの固まりのようなものが溜まっていて、表面の所々にぽつぽつとした青カビと、白い綿のようなカビが生えていました。
 
おそらくビーフシチューか何かを作っていたときに住人が亡くなり、そのまま放置されていたのでしょう。しかし、1ヵ月が経った今も、なぜ放置されたままになっているのか理解できませんでした。住人が亡くなったあとすぐに専門の業者が処理するものではないのでしょうか。
 
私たちはキッチンを離れ、奥の8.5畳のフローリングの部屋へ移動しました。
 
室内は少しも散らかった様子はなく、綺麗に片付いていました。そもそも物があまり多くなく、若い女性が住んでいた部屋には見えませんでした。まったく飾り気がなく、中年の男性が住んでいたと言われれば納得してしまいそうな雰囲気でした。
 
ベッドの上に、ジーンズがきちんと畳んで置いてありました。
 
壁にはコルクボードがあり、写真が10枚くらいピンで留めてありました。ほとんどがツーショット写真でした。
 
大型バイクの前で、ライダーススーツを着たショートヘアの女性と、おそらく10代と思われる透き通るような白い肌の美少女(美少女という言葉の他に形容のしようがないほどの美少女でした)が並んで写っていました。
 
ライダーススーツの女性が、この部屋の住人だったのでしょう。いっしょに写っている美少女とは、おそらく恋人関係だったのではないかと、私は思いました。姉妹とか友人といった関係とは明らかに違う、そのふたりのあいだにある何か濃密なものが感じられたのです。
 
住人女性の自殺の原因が何だったのかはわかりませんが、この美少女が何らかの形でかかわっていることは間違いないように思いました。
 
ふと気が付くと、Aがタンスの引き出しを開けて中を覗いていました。
 
「おい、やめとけ。そういう場所は見るな」
 
そう口にしたものの、正直なところ私も興味がわいてしまい、後ろめたさを感じながらも、こっそりタンスの中を覗き込んでしまったのでした。
 
廊下のほうに目をやると、店員はちょうど携帯電話で話をしている最中で、こちらに背中を向けていました。
 
「これ見てみい」
 
いちばん上の引き出しを開けたAが、嬉しそうな顔をして言いました。
 
女性ものの下着が綺麗に整理整頓されて入っていました。この飾り気のない部屋と、ライダーススーツの女性のイメージとは合いそうにない、明るい色やセクシー系のデザインの下着ばかりでした。もちろん、普段の服装と下着の趣味がぴったりマッチするとは限りませんし、もしかすると、いっしょに写真に写っていた美少女のものかもしれません。
 
「おいっ、触るな」
 
下着を手にとって見ようとするAを、私はたしなめました。
私は引き出しを元に戻しました。さすがに不謹慎なことをしてしまったと思い、気が咎めました。
 
「そろそろ出よう」
 
私は友人を促しました。
 
「トイレと風呂を見たら、すぐ出るわ」
 
彼は言うと、まっすぐバスルームへと向かいました。

痕跡

「うわっっ!」
 
Aが声を上げ、バスルームから慌てて飛び出してきました。
 
「どうした?」


「ロープがある…」


「ええっ?」
 
私は恐る恐る中を覗き込んでみました。
 
「あっ…」
 
洗面台の下に、梱包に使用するようなビニール製の太い紐が落ちていました。
 
私は中へ入ると、その場にしゃがんで、そーっと手を伸ばしてみました。べつにその紐を手に取ってみようと思ったわけではありません。ただなんとなく、手を伸ばしてみたくなったのでした。
 
「痛っ!」
 
その瞬間、私は思わず叫び声を上げてしまいました。
 
「大丈夫か?」
 
Aがバスルームの外から声をかけてきました。
 
「感電したかも…」
 
私は弱々しい声で言いました。
 
何かあったのかと、店員が心配そうな顔で部屋へ入ってきました。
 
「大丈夫ですか?」
 
店員がバスルームを覗き込んで声をかけてきました。私は顔をしかめ、片方の腕をもう片方の手でさすりながら出て行きました。
 
「洗面台の下に手を伸ばしたら、いきなりバチって感電したんです」
 
私は腕をさすりながら、そう言いました。
 
「たぶん静電気だと思います。うちの従業員も、そんなことがあったと言ってましたから」
 

店員は申し訳なさそうな顔をすると、
 
「じつは、このバスルームで亡くなってたらしいです」
 
と言いました。
 
「ええっ!」
 
私とAは同時に声を上げました。
 
「じゃあ、あの紐はやっぱり…」
 
私が言うと、店員は苦い顔でうなずきました。
 
背筋に冷たいものを感じた私は、これ以上ここにいるのはよくないと思い、部屋を出ました。
 
しばらくして、店員とAも出てきました。
 
「まあ、こんな感じですので、おすすめはしません」
 
店員はまた申し訳なさそうな顔をしました。この人は申し訳なさそうな顔をしてばかりだなと思い、なんだかこっちが申し訳ない気持ちになりました。

事故物件で生活を始めた友人が辿った末路

「あの部屋は絶対やめておいたほうがいいぞ」
 
私はAに忠告しました。
 
住人がひとり亡くなっているというだけでも気味が悪いです。それに加え、あのバスルームで感電した強烈な静電気も気になりました。昔から水回りには、静電気や人体に悪影響を及ぼす電磁波が発生しやすい場所があるという話を聞いたことがあったのです。
 
庭や家屋内に、古い時代に作られた井戸がそのまま残っていると、その場所に悪い電磁波が集まり、知らず知らずのうちに人体を蝕み、病気になったりすることがあると言います。使っていない井戸があれば埋めてしまったほうがいいという話を、たしか祖母から聞いたことがありました。
 
Aは私の忠告をいったん聞き入れはしたものの、1週間後、ひとりで不動産屋を訪れ、あの部屋を借りる契約を結んだのでした。
 
そして半年後、別人のような顔つきになってしまったAは、マンションを退去し、総合病院の精神科に通院を始めました。
 
私が怖れていたことが現実になってしまったのです。
 
 
Aがあの部屋で生活を始めたあと、しばらくは頻繁に連絡を取り合っていましたが、3か月が過ぎたあたりからだんだん彼と連絡がつかないことが多くなっていき、そのうち私のほうからは連絡をしなくなりました。
 
不動産屋から私のもとへ電話がかかってきたのは、Aが入居して半年が経とうという頃でした。
 
あの部屋を借りる際、保証人は不要だったのですが、契約書に緊急連絡先を記入する必要があったらしく、Aは私に無断で、私の住所と電話番号を記入していたのでした。
 
普通ならそのことに腹を立てたと思いますが、そのとき不動産屋から聞かされた話があまりに衝撃的だったため、私は連絡先を無断で使用されたことなどどうでもよくなってしまいました。
 
Aが深夜に大声でわめき、室内で暴れたり、ドアを蹴とばしたり、廊下ですれ違った住人に罵声を浴びせたりしたのだというのです。周りの住人から苦情が寄せられ、管理会社がAのもとを訪れると、ドアに赤色のインクで渦巻き模様がいくつも落書きされていたそうです。
 
鍵がかかっておらず、管理会社の人間がドアを開けると、部屋の片隅でうずくまっているAの姿があったといいます。
 
見ると、室内の壁にも赤い渦巻き模様があちこちに描かれてあったそうです。
Aはなかば放心状態で、体をぶるぶると小刻みに震わせていたものの、問いかけには反応し、うなずいたり首を横に振ったりしたといいます。
 
しばらくして落ち着きを取り戻したAは、「管理人に監視されている」といったようなことを口にし、「ドアを開けて入るのが怖くて、ベランダのガラスを割って入った」と話したそうです。コンクリートのブロックを使ってガラスを割り、その際にAは手を怪我していたということも聞かされました。
 
不動産屋の話によると、そのマンションの管理人というのは、60代くらいの陰気な感じの男で、ネチネチと小言を言うことがあるらしく、管理会社の人間もあまり良い印象は持っていなかったのだとか。ただ、男がAのことを監視していたという事実は確認できず、Aの被害妄想ではないかと、不動産屋は暗にほのめかすような言い方をしました。
 
しかし、Aがそのような事態を起こしてしまったことに苦言を呈するわけではなく、どこか納得しているような感じを受けました。事故物件ということで、何か良からぬことが起きることを、不動産屋も想定していたのかもしれません。
 
 
怖いもの見たさだけで事故物件になど住むものではありません。
曰く付きとあれば何かと興味が湧くのが人間というものですが、人が亡くなった場所に無闇やたらと足を踏み入れるべきではないと思います。
 
あのような事態になったのは、もしかしたらA自身の性格によるところが大きかったのかもしれません。同じ部屋に住んでも、べつに何ともない人もいるかもしれません。
 
しかし、事故物件だと知らずに住んでしまった場合はともかく、それと知って興味本位で足を踏み入れるのは、やはり不謹慎な気がします。
 
あの物件の場合、管理会社が閉鎖することをすすめたにもかかわらず、家主がそれを拒否したこと。そのことがそもそも間違っていたと思います。
 
家賃収入が減ることが家主にとっては我慢ならなかったのかもしれませんが、やはり罰当たりな行動だった気がしてなりません。
 
もちろん、あの部屋でタンスの中身を覗いたりした私たちも罰当たりな人間です。それについては反省しています。
 
現在、Aは心身ともに健康な状態で、とくに問題なく生活しています。
健康を取り戻して以来、彼の口から事故物件に関する話が出たことは一度もありません。
 
 
※この話に出てきた物件については、私が確認したかぎりネット上に情報は出回っておりません。『大島てる』にも掲載されていませんでした。



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この記事を書いた人

なかぞの

大阪府生まれ。22歳で文芸同人誌に参加。文学・アート系雑誌での新人賞入選をきっかけに作家業をスタート。塾講師、酒屋の配達員、デリヘルの事務スタッフなど様々な職を転々としたのち、現在はフリーライターとして活動中。足を踏み入れるとスリルを味わえそうな怪しい街並み、怪しいビルの風俗店を探し歩いている。

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