風俗業界、転がってみました。-元風俗嬢の泥臭い転身-

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風俗業界、転がってみました。-元風俗嬢の泥臭い転身-

「風俗業界、転がってみました。」

ピンサロ

カサイユウ(ライター・元風俗嬢) 1 3,858 2024/01/27
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<風俗業界、転がってみました。-元風俗嬢の泥臭い転身- >

生来、好奇心旺盛の自負と共に生きてまいりました。いや、わたしの心臓に棲んでいる好奇心が先走りして、肉や皮を突き破らんばかりの勢いで走って走って走りまくって、無理矢理に生かされてきたという方がしっくりくるかも知れません。

第1話 風俗嬢デビューから引退まで。

二十代の大半をナイトワーカーとして過ごしました。ナイトワーカーと一言で申し上げましても様々な業種がありますが、わたしの場合はピンクサービスを含むお仕事、つまり風俗嬢として働いていた期間が大半を占めています。ざっくり分類いたしますと、ヘルス、ピンクサロン、セクシーキャバクラ、お触りなしのキャバクラ、スナック…などなど。

その中で見てきたものを文章として残すことができたらと、部屋でひとり静かにキーを叩く今のわたしは三十歳。現在は各ナイトワークから引退をして飲食業に従事しております。

もちろんわたしと同じ年齢で、現在も現役で就業されている方は沢山いらっしゃることでしょう。ですが、三十歳を迎えた今のわたしにはもうナイトワークを続けていくことができません。若い頃に比べて、気力や体力が衰えているせいです。もうあの頃のように、暇つぶしにテイクフリーの風俗求人誌を読みあさっては「このお店おもしろそう!電話電話!」というようなことも全くする気が起きないのです。

そして心の奥底で煮えたぎっていた「無難に生きていたら出来ないような特別な経験がしたいし、見たことないものをたくさん見てみたい。」という情熱や欲望が、気付いた時にはすっかりと萎えてしまっていたのです。もちろんこの世の全てのナイトワークを経験したわけではありませんが、やりたいことはひと通りやってきた感じもいたします。気持ちの面で意欲が萎えてしまうと不思議なことに、身体を動かすことも出来ないものです。

お金欲しいし、特別な経験がしたい!

それでも、たくさんのお金を稼ぐため、そしてなるべく楽しくナイトワークライフを過ごすため、「指名を取るにはどうしたらいいんだろう…」「好かれる接客をするには何を意識すればいいんだろう…」と毎日本気で考えていた時期のことを思い返すと、夜の世界はこんなわたしにたくさんの経験を与えてくれたとっても素敵な世界であったなあという気持ちになります。プリングルスの容れ物に大量の一万円札を溜め込み部屋でひとりニヤニヤしていた日々も、もう遠き良き思い出です。

未経験でも即決採用!素人でも即高収入!であるナイトワークはわたしにとって大変魅力的なお仕事でしたが、以上の理由によって二十七歳のセクシーキャバクラ勤務を最後にナイトワークから身を引きました。

風俗業界を転々と転がってみたわたしがそこで見てきたものをお伝えしてまいりますので、どうぞお楽しみいただけましたら幸いでございます。

第2話「五反田ピンサロS店」ピンサロ嬢って、意外と手堅いかも。


流れのままに転がってみた風俗業界のお仕事の中でもダントツで稼ぎの割が良く、そのため平穏な精神状態で働くことができたのは五反田のピンクサロンでした。現存しているお店ですので、S店といたしましょう。「五反田 ピンサロ」で検索をかければヒットするかもしれません、ぜひどうぞ。

系列店も含めると、S店にはおよそ一年ほど在籍していました。そこまで腰を据えて働くことができた理由は、まず時給制であること。そしてフリーのお客様相手でも一本しゃぶればそのバックが付きます。もちろん写真指名、本指名を取ることができればそれ以上のバックが発生します。嬢は時給にプラスして実際にしゃぶった分とお客様を呼んだ分のバックを稼ぐことができます。

わたしがS店に在籍していた期間中、一日で稼ぐことができた最高金額は四万円をすこし超えるくらい。デリヘル在籍時にはお客様が来ずお茶をひくこともしばしばでしたので、待機時間も時給が保証されているというのは非常にありがたいことでした。

とはいえプレイする場所は薄暗い店舗内のボックス席。薄暗いことにもちゃんと理由はあるのですが、衛生面だけ見ると嬢にもお客様にとっても決して良いとは言えません。デリヘルのように接客のたびにシャワーを浴びるということがなく、前の接客が終わるとアルコール消毒されたおしぼりで身体をゴシゴシと拭き、また次の接客をするべくボックス席へ向かうのですから。お客様としてはあまり想像したくないですよね。

きっかけは、ポケットティッシュ。

「どうせやるなら、各業種を制覇してやろう!」などと思いつつ鼻息荒く飛び込んだのはピンサロでした。とは言っても、頭からピンサロに入店するつもりだったわけではありません。

ある日街中で受け取った高収入アルバイトチラシ入りのポケットティッシュ。そこには何やらポップな字体と色遣いで「メイド喫茶オープニングスタッフ募集!時給1,600円~」というようなことが書かれていたかと記憶しています。

お恥ずかしながらその時期は手持ちの現金が心許なく、できれば即金で割の良いバイトがしたいというタイミングであったので、早速面接のアポイントを取ることにしました。

またその当時はメイド喫茶なるものが流行り始めた時期でもあり、新しいものに興味津々で飛びついたものです。履歴書すらいらないなんて、何て楽チンなんだろう。しかもメイド喫茶で働くなんて初めてだ!と、ウキウキ気分で面接地の五反田へ向かうわたし。

飛び込み体験入店。

山手線を降り改札を出て、指定のファーストフード店にて面接担当の方と待ち合わせをし、無事に落ち合ってお仕事の詳細を聞くことに。ところが面接担当の方のお話を聞いていると、何か様子がおかしい。「メイド喫茶の方がね、思ったより応募が多くてもう埋まっちゃったんだよね…」と残念そうに言うその方。後になって思い返せばそういう手法で入店させているものだとその場で分かりそうなものですが、まだまだ世間知らずの小娘は全てを鵜呑みにし、メイド喫茶で働けないと知るとガックリ落胆しておりました。

そこに一筋の光!啓示とも思えそうな一言を確かに得たのです。「系列店の方ならまだ募集があるから、そっちに体験入店してみる?」イエス!一択です。お金稼ぎたい!お金欲しい!なんなら今日欲しいです!「そっちはまあ行って実際に見てもらった方が分かりやすいだろうからね、今から行ってみよう。」よろしくお願いします!ワーイお金!!

…というような流れで、身も心も飛び込みの体験入店へ向かうわたしでした。

ちなみにこの時点で、体験入店先がピンクサービスを含むお店であることははっきりとは知らされておりません。だけど面接担当の方の言葉の節々から、さすがに何となくは察しました。

第3話「五反田ピンサロS店」はじめての、ぴんさろ。


初対面である面接担当の方にトコトコと付いて歩き、徒歩一分足らずの場所にある五反田ピンサロS店へいざ体験入店!という大冒険に出たわたし。なかなか広さがありきれいな店舗であったと記憶しています。一階にある入り口すぐのフロントには嬢たちの武器のひとつである写真パネルが煌々と並んでおり、殿方の性的欲求に波を立てます。フロント裏に回り嬢たちのロッカールームへ入り、その奥にある階段から地下に降ります。気分は極秘潜入。

地下一階に降りると、ずらりと並んでいるスタンバイ中の嬢たち。全員揃ってセーラー服を着た彼女たちはおよそ十人ほど、横並びの長い長いソファに座って待機しています。携帯をいじくる嬢、カラ名刺を色ペンでデコる内職中の嬢、雑談で盛り上がる人懐っこそうな嬢…なんだか自由っぽい空気感です。

そんな嬢たちはわたしの姿を認識するやいなや、みんな揃って「こんにちはー!」と明るい挨拶をしてくださいましたが、その瞬間わたしは微妙な違和感を感じました。ナイトワーカーの女の子は報酬の発生しないシーンでは至極そっけないものであることを、どこかのお店の待機所で覚えていたせいだと思います。そんな予想外の景色に気圧されつつも、なんとか聴こえる程度の小声で「こんにちは…」と返す、人見知りのわたし。右も左も分からないはじめてのぴんさろで、驚きと同時に感じる少しの安堵感。だけど、もしかしたらもしかして、楽しくやっていけるのかな…?と感じました。

講習という名の洗礼。

大概の体験入店にはまず講習があります。S店ではスーツを着た黒服さんがお仕事の流れを丁寧に教えてくれました。人がふたりも入ればもうキツキツのボックス席。そこにある短いソファの奥にお客様をお通しし、自分は手前に座ります。ご挨拶からプレイに入るまでのトークをします。お客様に「乗っていいですか?」と聞き、OKと答えれば向き合った形で膝上に乗ります。セックスで言うところの対面座位というやつだと思います。そこからピンクサービス開始。お客様の下を脱がし、あらかじめ準備しておいたアルコール消毒済みのおしぼりで肉棒を優しくお拭きします。お口でピンクサービスをします。抜きます。抜くって何を?男性の魂とか、性欲とかそのようなものを。それが済んだらピロートークのような、送り出しまでをつなぐ会話をします。サービスする場所は地階なので、地上に続く階段前まで手をつなぎ笑顔でお送りします。

しゃぶるか帰るか、どっちかだ!

先にも申し上げました通り、わたしは人見知りであります。少なくともナイトワークの世界を転がりに転がっていたこの時期は、人と関わることもお話することも、自分がよっぽど興味を抱いている相手でなければ極力避ける程度には人見知りでした。ただ、その苦行をこなすことで見返りがある場合は別です。ナイトワークの世界で言えば、お金というとっても分かりやすいモチベーションが手を伸ばせば届く場所にある。すこし考えて弾き出したその状況での最良の立ち振る舞いは、とにかく口角をぐいっと上げること、そしてなるべくその状況を楽しむことでした。楽しくなかったら、続けることすら出来ませんからね。

第4話「五反田ピンサロS店」ピンサロ嬢誕生♪はじめまして、ユウです。


ナイトワークの魅力と言えば、やはり即金高収入。もちろんわたしもお金をモチベーションとしてお仕事をしていたわけですが、お金の次に魅力的だったのは目を見張るような個性をお持ちのお客様たち。「この世界でしか見られないものが見たい!」という動機の上でいざピンサロへと入店いたしましたので、やはりお相手となるお客様の人柄はじっくり観察するわたし。

大変失礼ながら、お昼間の世界でどんなに偉い肩書きを持っていようが、はたまた何もお持ちでなかろうが、何を生業にしている方であろうが、男性という生き物は欲望の前に限っては、「タダのひとりのオス」であると思っております。この業種の特性上やはりお客様の方から進んで素性を明かすこともそうそうありませんので、ひとりのオスとしてそれ以上でも以下でもない存在として接客をさせていただいておりました。色んな意味でね。

それを踏まえて聞いてください。実は、とっても可愛いのです。おじさんたちって。お昼間の世界ではきっとそれぞれに抱えているお仕事や責任や人間関係があることでしょう。そしてそれは決して軽いものではないことも、想像に難くありません。それらの重たい荷物を全てとっぱらって、嬢を求め嬢に甘えるおじさんたち。そんな風に素直に甘えていただけますと、なんだかとってもとっても可愛くて、それはもう思わずギューっと抱きしめたくなってしまうほど可愛いのです。またそんな風に、決して安くないお金で買った特別な時間を上手に楽しむことができるおじさんたちは夜遊びが大変上手なのであろうとつくづく感じたものです。わたしは声を大にして申し上げたい。素直なおじさんは可愛い生き物!

にゃんにゃんおじさん。

ボディラインにはまったく自信を持てず、その代わりに明るさや愛嬌をセールスポイントとしてお仕事していたわたし「ユウ」を指名してくださるお客様は、どちらかと言うとハードな性的サービスや特別な技術よりも、のんびりまったりと癒されることを大切にされていた方が多かったように思います。

週に二日、三日ほど通ってくださるお客様がいらっしゃいました。外見は少しメタボ気味の五十路手前、毎回スーツでのご来店でした。午後の明るい時間にいらっしゃることがほとんどでしたので、もしかしたらお仕事の休憩時間を使ってご来店くださっていたのかも知れませんね。表情が固まっておりあまり笑顔を見せない方でしたが、そのお客様の一番の特徴は…語尾に必ず「にゃん」が付くこと。接客中は「ユウちゃんにゃん。会いにきたにゃん。」と、終始ブレることなくこの調子。もう半分ほど笑い話ではありますが、真顔でおっしゃるのです。「ユウちゃんにゃん。今日もかわいいにゃん。」「ペロペロしてにゃん。」と。消え入りそうな小声ではありますがそんなにノリノリで来られたら、こっちだって楽しくなっちゃいます。まるで幼児をあやすように和やかに接客をさせていただいた、大変記憶に残るお客様でした。

夜のお店はヴァーチャルリアリティ、だけど…。

わたしの嬢としての接客スタンスは、どんな種類のお店でも「店やお客様、そして嬢であるわたしに迷惑がかからないなら大概のことはOK。」です。そのせいかメルヘンチックな思考をなさるお客様も多かったように思います。ここは現実だけれど、現実と直接リンクしない。昼間の肩書きや重責を一時的に捨てて心の底から楽しんでいただけたら、わたしも嬢冥利に尽きるというものです。ただその分、例えば何の断りもなく唐突に尻穴に指を突っ込んでくるような無礼者には真顔で叱責させていただいておりました。お金で買った時間、お金で買った女とは言え、そこに感情はあります。嫌なことは嫌です。そしてお金で買った空間であるからこそ、その空間の中で物事を完結させるための前提条件を忘れずにいて欲しいです。

どのような趣向をお持ちの方であっても、それを実現する方法はしっかりとお考えいただいた上でご来店いただけましたら幸いに思います。犯罪まがいの願望でさえ、今のこの時代にはそれに近しいことを叶えられる場所がたいてい用意されているのですから。

第5話「五反田ピンサロS店」おじいちゃんとシックスナイン


前記事にて申し上げました通り、わたしはボディラインやテクニックで勝負するよりも性格の良さを全面に押し出す「雰囲気接客」で日々を乗り切っておりました。雰囲気でごまかしていたとも言えそうですね。そんなタイプの嬢でしたのでハードなサービスを求められることもそうなかったのですが、単純に肉体的につらい!ということがひとつだけありました。
その日のご来店は常連様である六十歳ぐらいのおじいちゃん。見た目は身長が高くて癒し系。性格も癒し系。職業は靴屋さんだそうです。通ってくださる日数もそこそこに多く、わたし自身親近感を感じていた馴染みのお客様です。

おじいちゃんとシックスナイン。

いつも通りに楽しくおしゃべりをして、さてそろそろプレイに入ろうか…というところでおじいちゃん何か言い始めました。「ユウちゃん、俺ね、ここで、シックスナインしてみたい…。」とのこと。

それを聞いたわたしは(へっ!?この狭いボックス席で、どーやんの!?)と思いました。続けておじいちゃんはおっしゃるのです。「俺ね、ユウちゃんの××××舐めたい…。」だそうです。そう言いながら若干の上目遣いでわたしを誘ってくるおじいちゃん。本当に本当に、したかったんでしょう。しばらく腕組みをし悩みつつも、せっかくしたいことを言ってくれたんだし…と、ご要望にはなるべくお応えしたい精神から一応トライしてみることにしました。

まずおじいちゃんが短いソファに仰向けになります。本当に短いソファですので、ふたり座ったらもうキツキツです。そしておじいちゃんは身長が高い。もう脚がボックス席の外にはみ出しそう…。そのままおじいちゃんの指示に従って、上から覆いかぶさる形で重なってみたら…おっとこりゃなかなかツライぞ、腕が…腹筋が…。それでもおじいちゃんに思いっきり体重をかける訳にはいかないので、そのまま腕立て状態をキープ。その体勢のまま肉棒にサービスをいたします。ご想像いただけますでしょうか?なんだかすごく、筋トレをしているみたいな気分でした。

何だよこの体勢…何プレイだよ…首痛いよ…とそこそこに苦しみつつ、やはりこのお仕事は身体が資本であることを痛感したわたしでありました。結果おじいちゃんにはご満足いただけたようで、何よりです。

嬢への差し入れ、本当に食べてるの?

心優しいお客様からたびたび「お腹すくでしょ?良かったら食べてよ!」と、とっても美味しそうなパンやベーグル、お菓子などを差し入れしていただくことがありました。S店は差し入れの受け取りがOKでしたので、お礼を言い待機所へ持って帰ります。が、わたしの場合はお気持ちだけいただき、大変申し訳なく思いながらもそのまま処分させていただくことが多かったです。

馴染みと言えどお客様はお客様。S店ではお客様との連絡先交換が禁止されていたので、お互いに素性も分からない。食べ物となると何が入っているかも分からない…。本当はお客様を疑いたくなんてありません。本心からそう思っているのですが、お仕事の特性上ちょっとした差し入れがトラブルに発展する可能性は十分に考えられます。そして、もしもトラブルが発生した時に後始末をするのは嬢本人ただひとり。お客様やお店を責めることはできません。

もちろん差し入れ自体はとてもうれしいことでしたので、決して差し入れがいけないことだという話ではございません。こんな裏事情もありますので嬢は時に全力で嘘を吐きますが、もしこんな裏事情を知ることがあったとしてもどうか責めないであげていただけたら幸いです。むしろそんな嬢の嘘を楽しんでいただけたら…なんて申し上げましたら、それはすこし贅沢なことでしょうか。

食べ物以外では当時品薄だったニンテンドーDSをいただいたことがありますが、そちらはありがたく頂戴いたしました。一人暮らしの部屋で夜な夜な没頭したNewスーパーマリオブラザーズ、面白かったなあ。ゲーム機だってすこし考えれば疑いようは十分にあるのですが、盗聴器やら何やらの不穏な部品がくっついている可能性なんて、もしもあるとしても相当低いであろうと踏んで…いや、正直なところ、DSは欲しかったんです!食べ物の件で何だか凄く真面目に語っておいて本当にごめんなさい!

第6話「五反田ピンサロS店」早漏過ぎるお客様へ、わたしが神対応致し候。


ある日接客をさせていただいたフリーのお客様のお話。


お客様はご来店されたらフロントを通り、地階のボックス席まで案内されます。嬢は黒服さんから指示を受けたボックス席へ向かい、そこでお客様と対面することになるのですが、その日のお客様は細身でちょっとよれているような青のチェックシャツの殿方。整えられていない中途半端な黒髪の、およそ三十歳くらいの方でした。インドア風と申しますか、なんとも気弱でモテなさそうというタイプです。


とはいえ、いただくお金に貴賎はなく、ピンサロのお客様にも貴賎などございません。いつも通りにご挨拶からスタートし、プレイに入りやすい雰囲気を作るべくお客様の身体のどこかにそっと触れながら雑談をし、徐々に心と身体の距離感を詰めてゆきました。


あまりおしゃべりが得意そうでないお客様の場合、ごく自然にエロモードに入れるような空気を作ります。耳や首、お洋服の上から肩や胸に触れながらも囁くような声でおしゃべりをいたします。「五反田にはよくいらっしゃるんですか?」「わたし、あんまりこのあたりのこと知らないんですよね。お仕事でしか来ないから。」などと一方的にしゃべりながらも、徐々にエロい雰囲気を出していきます。


この時、お客様はもしかしたら「早く抜いてくれ!」と思っていた可能性もございますが、接客時間にはあらかじめ決まった設定があるためあまり早く終わりすぎると二回戦目を求められてしまう可能性があります。一生懸命頑張って一度抜いたお客様に二回戦目を求められるのはわたしはあまり好きではありませんでしたので、お客様に退屈させないよう気を付けながら時間稼ぎのボディタッチを続けます。

エロボルテージを高めていきます。

ジーパンのベルトに手をかける前に、お洋服の上からお客様の肉棒があるあたりを手のひらで優しく撫でます。この時に肉棒のだいたいの大きさが分かるのですが、小さめの方ですとお口でサービスする時にアゴが楽ですので、心の中でちょっと喜びます。


頬やくちびるに軽くキスをはじめます。舌先でお客様の舌を誘いはじめたら、徐々に深く…と、サービスを進めていきます。もうそろそろかな、というところでソファに座っているお客様の膝上を乗り越える形で片手をつき、もう片方の手はお洋服の上から肉棒を指先でなぞり、撫で回します。お客様と向かい合いキスをしていると、もうとってもエッチな雰囲気!


お客様の表情から察するに、まんざらでもなさそうです。これはスムーズに抜けそう。ちょっと押せ押せで頑張ったら本指名ももらえるかも…と踏み、サービスにも熱が入ります。

ベルトに手をかけようとした、その瞬間…。

その瞬間は突然訪れました。不意に「あっ」と声を漏らすお客様。何やら様子がおかしい…?


本格的にサービスに突入しようとしていたところですのに、何やら様子がおかしいし、急に黙ってしまわれた青チェックシャツのお客様。


何か失礼なことをしてしまったのかと困惑し「どうしたんですか?」と問うわたし。それでも「いや、何でもないから…」としかおっしゃらず、本当にどうしたら良いのか分からない。続けて口を開いたその方は驚いたことに「今日はもういいや…大丈夫…もう帰るから…。」とおっしゃるのです。


こう言われてしまっては本格的に不安になるわたし。「どうしたんですか?わたし何か変なこと言いました?」と必死で原因を聞き出そうとするも、大丈夫大丈夫と言いつつ静かに席を立つその方。


席を立つとちょうどわたしの視線の先に来る、お客様の下半身。ここでやっと気が付きました。


先ほどまでくっきりとあった肉棒の盛り上がりが、跡形もなく消えている。どうやらお洋服を脱ぐ前に、イってしまわれた様です。

マジですか…困惑に包まれるボックス席。

初めて遭遇する状況に引き続き困惑しながらも、出てしまったものは仕方がないので、そんなことより今はこの状況をどうするのかが問題です。早く最善策を提案しなければ…とフル回転するわたしの思考。


この場合は事故のようなものですし、まだまだたっぷり時間もあるので二回戦目を要求していただいても全く問題はなかったのですが、それはそれでお客様のプライドを傷つけてしまわないだろうか?


…と迷って何も言い出せないうちにゆっくりとボックス席を出ていくお客様。わたしは小さな声で「ありがとう、ございました…」と声をおかけしながら、その方の後ろ姿を見送ることしか出来ませんでした。


せっかく安くはないお金を払っているのだからもっと濃厚な時間を過ごしたかったはずなのに…。でもこれでこの分の接客バックはもらえるんだからラッキーだよなあ…。うーんでも、うーん…。と、なんだか煮え切らない気持ちで待機所で戻るわたしでした。

早漏のご対応、致し候。

わたしが考えるピンサロ嬢のお仕事ですが、接客の最後には絶対に抜かなければいけないと思っています。もちろんお客様の体調にも左右はされ上手に出来ないときもあるのですが、やっぱり一発は抜いてあげないと仕事をした気分になりません。だってピンクサロンは抜くお店だもの。抜けないなんて詐欺だ。


もちろん「嬢が可愛ければ抜かなくてもイイ!」という方もいらっしゃるかも知れませんが、それは本指名嬢に限っての夢物語。フリーのお客様でそんな奇特な方はまずほとんどいらっしゃらないでしょう。


今回の場合は生身の肉棒にサービスをしたわけではありませんし、脱がせていないし舐めてもいない。それってもしかして、お客様が自宅で行うオナニー以下じゃないだろうか?

それ以降はそのお客様に出会うことはありませんでしたし、ご来店いただいたのかどうかも分かりません。もしかしたら、もの凄く恥ずかしい思いをさせてしまったわたしをNG嬢に指定したのかも知れません。


やはり思い返すと申し訳ない気持ちになり、在籍中にもしまたお会いできる機会があったならば、こう申し上げたい気持ちでありました。


「あなたは二回戦、大丈夫だから!!」

第7話「五反田ピンサロS店」ピンサロ嬢のお仕事道具を説明しましょう。


セックスワーカーになっていなかったら一生出会うことはなかったであろう…それがお仕事用の備品たち。大きな声では言えない、だけどとっても大事なピンサロ嬢の必需品をご紹介したいと思います。

あなたの肉棒、お拭きします。

大きめのタッパーのような容器になみなみ注がれた茶色の液体。その中には大量のおしぼりたちが浸かっていました。茶色い液体とは、皆様ご存知のウイスキーです。ハイボールに入っているやつですね。銘柄は忘れてしまいましたが、ちゃんと飲めるやつです。お客様をお迎えするごとに使用するので消費が早いこと早いこと。ひとりのお客様に対しておしぼりは二本。サービス前後に一本ずつ、お客様の肉棒を清潔にするためのものです。

当時は「コレで本当に消毒できるのかな?」と疑問でしたが、プラシーボ効果も手伝ってその疑問を誰かにぶつけることはありませんでした。わたし自身、衛生面について神経質な方でもありませんでしたからね。

ところで、これはどこかで聞きかじった話ですが、人体はお尻の穴からアルコールを注入すると大変なことになるらしいですね。最悪の場合は救急車を呼ぶような事態になるのだとか…。これまでにアルコールおしぼりを使用して具合を悪くされたお客様は見たことがありませんが、一歩間違ったらちょっと笑えない状況になってしまいそう。おしぼりに染みているのは微量ですしお尻の穴まではそうそう拭かないのであまり問題ないかと思われますが、ご来店の殿方にはどうかお気をつけていただきたいものです。

全部吸収してくれるのです!

殿方は、海綿をご存知なのでしょうか?女性の局部に挿入すると経血を吸収し、漏れを防いでくれるというスグレモノなのですが、一般の女性が使用しているという話はわたしは今まで聞いたことがありません。

もちろんわたしもセックスワーカーになるまで使ったこともなければ名前すら知りませんでした。風俗嬢になってから菜摘ひかるさん(https://ja.wikipedia.org/wiki/菜摘ひかる)という風俗嬢エッセイストの方の本で読み「便利なものがあるんだなー」と思った次第です。

生理は不純の場合を除き、大体ひと月に一度訪れます。当然出勤日にだって構わず訪れます。血が出るしお腹痛いし気が滅入る、そんな時ぐらい自宅で休みたいところですが…。

あんた、鬼や!と叫びたかった瞬間。

タイミング悪く出勤前に生理がやってきた時のことです。自宅からお店に電話を入れ「スミマセン、生理来ちゃって。ちょっと具合悪いので休んでいいですか?」とお伺いを立てたことがありました。体調不良ですので当然休めると思っていたのですが、運悪く電話に出たのは黒服さんの中でもちょっと偉い人。「イヤー、そんなに簡単にお休みはあげられないよ!生理中だって頑張って出勤してる子もいるんだよ?」具合が悪いので少しは優しく対応してくれるかと思いきや、お説教のお土産付き。最悪です。

せっかく慣れてきたお店をクビになるのも嫌ですので、泣く泣く痛む腹を引きずり五反田へ向かい、通り道の薬局で海綿を買い、お仕事に励みました、とさ。

簡単装着!海綿の使い方。

こんな風にわたしのセックスワークを長きに渡り支えてくれていたこの海綿、使い方は非常に簡単です。ハサミでお好みの大きさにカットし、水で濡らし絞って、ズボーンと局部に突っ込むだけ!これでお客様のお召し物が汚れることもなく、まるで平常時かのようにサービスに精を出すことが出来るのです。お客様の指が局部に侵入してきても経血が漏れず、局部の奥の方に突っ込んであるので生理中であることもバレないのです。感動モノですね。若干コツもありますが、覚えてしまえばこっちのもの。

タンポンやナプキンよりも安価ですし、女性の方は経験として一度お使いになってみてはいかがでしょうか?


五反田ピンサロB店での経験談に続きます



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当コラムコーナーは、実話もフィクションも入り混じっています。読み物エンターテイメントとしてお楽しみいただく目的で掲載しており、記事の行為を推奨したり、犯罪を助長するものではありません。

この記事を書いた人

カサイユウ(ライター・元風俗嬢)

二十代の大半を、東京の風俗業界で過ごした元風俗嬢。ナイトワーカーとしての半生をまとめた人気連載シリーズ。思慮深く、洞察に富んだ性格で風俗嬢ライフをさわやかに駆け抜ける。

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