一言で言うなら、渋谷は天国だった。今までの魔界に比べてラブホが圧倒的にキレイ。
古くて微妙なところはあるものの、貞子や伽椰子が出てきそうな恐ろしいラブホは極めて少ない。
それと個人的な感想だが、渋谷は比較的に客層がマシなのではないかと思う。
道玄坂の人通りが多いからか、「今仕事中?」など野暮な質問を投げかけてくるD級妖怪がいない。
夜中だとクラブも近い立地であるため、D級以下の妖怪がウジャウジャ沸くらしいのだけど、しらいしの勤務したホテヘルは朝方まで営業していなかった。
そのため、知性の乏しい妖怪達に遭遇することはなかった。
「今までの勤務地ってやっぱ日本じゃなかったんだな」と改めて思うほどであった。
なんと待機室に、ダニがいません!
待機室にダニがいるかいないか、という低レベルな点でビクビクしていた。過去に植え付けられたトラウマはでかい。
ここのホテヘルは待機所がとても広く、掃除も行き届いていた。
一つ一つがカーテンで仕切られていて個室状態になっており、快適に過ごせた。
漫画や雑誌も充実していて、間違ってもホスト雑誌とかは一切見当たらなかった。
ちゃんと「NAR〇TO」とか「ワン〇ース」とかメジャーな作品が揃えてあり、初めて待機に来た時は感動したくらいである。
待機に寝泊まりしている女の子もいないし、みんなすれ違うと挨拶してくれる。
一般社会では当たり前だけど、風俗勤務のキャスト同士ってなかなか挨拶ができない。
大久保も勿論そうで、「お疲れ様です」とこちらから言っても総シカトか、常に電話していて聞こえてないようだった。
ここでは、ホストの話をしている人も、大声で電話をしている人もいない。
むしろ女の子は優しくて、たまに話し掛けてくれる人もいた。私が出勤すると常にいる、待機番長お姉さんみたいな人なんだけど。
出勤の度に「大丈夫?」慣れた?」と気を遣ってくれるのである。この気遣いは、嬉しかった。
ただそのお姉さん、ドピンクの花柄のトレンチコートに赤チェックのスカート、偽物のスワロフスキーのついたキラキラバッグに猫ニーハイ、ドピンクのハイヒール(推定15センチ)、みたいな超個性的ファッションをしているのである。
(猫ニーハイってこんなんだったよね?)
「圧倒的情報過多……ッ」と視覚に映るショッキングなコーデ、しばらく目がチカチカしていた。
あの日本中を騒がせたポ〇ゴンとチカチカ度は同じくらいかもしれない。
あの服のままお客様の元へ向かっているのかと思うと所さん並みに目がテンになった。
お姉さんはとても優しいのだが、情報過多系ファッションのせいでどうも話が頭に入ってこない。
「慣れました、うへへのへ」とか適当に返事しつつ、会う度に心の中でファッションチェックを繰り広げてしまう自分が居た。ちなみにピー〇並みに辛口だ。
お店も注意しないのかなーなんて疑問に感じていたけれど、ぶっちゃけ格安ホテヘルなんてそこらへんは野放しである。
よっぽどコンセプトがガチガチに固まっているとか、高級店じゃない限り、ジャージやスウェットでなければ服装に文句はつけられない。
そんな情報過多待機番長とも仲良くしつつ、順調なホテヘルライフを送っていた。
ホテヘルって自力移動ですから
ホテヘルという職業上、あちこちのラブホに出入りする。
渋谷の道玄坂なんてラブホが死ぬほど乱立していて、だいたい風俗御用達ホテルは決まっているのだけど、それでもほぼ全部制覇した気がする。
これを読んでいる風俗マスターの皆さんなら分かると思うけど、道玄坂の「百軒店(ひゃっけんだな)」と呼ばれるエリアに風俗御用達ホテルが多い。
しかし私の在籍していたホテヘルは、道玄坂のド真ん中ではなくて、どちらかというともっと登り切った部分にあった。
そうすると必然的に、頻繁に利用するラブホが百軒店付近ではなくなる。出勤の度にクラブやライブハウス付近のラブホ街をぐるぐる歩き回っていた。
それでも時には百軒店付近に呼ばれるから、のそりのそりと歩いて行った。
待機所から近いと移動もラクだけど、遠いと雨の日や雪の日が大変だった。
あと、一日に何度も同じラブホに出入りすることが頻繁にあるから、なんか気まずい。
ホテヘルって気軽に始められるけど、こういった点がデメリットだ。
それでも当時はデリヘルを知らなかったから、自力移動にさほど違和感を抱いてはいなかった。
何度も同じホテルに出入りするのも、仕方ないと割り切っていた。
こうして私は渋谷・道玄坂のラブホを全網羅するのであった。
ちなみに百軒店、という文字が思い出せなくてググったんだけど、検索結果に「ショッピングモール」と出たからGoogleはだいぶ頭がおかしいのかもしれない。
かつては渋谷の中心街だったそうですが、現在は性のショッピングモールです。
「お仕事バッグ」も用意してくれていた良心的ホテヘル
なんだか今回はしらいしの下手ウマイラスト公開回になってしまい、ゲンナリしている人も多いのではないだろうか。
ちなみに美術の成績は2に近い3だから許して欲しい。
だいたいホテヘルと言うと、上記のイラストのようなバッグを持たされる。中にはローションやら無香料のボディソープやら、仕事に必要な道具が入っているのだ。
しかし在籍していた店舗は、「あの鞄は“いかにも”だから」と普通のバッグを用意してくれていた。みんなそこに仕事道具を入れ、ホテルへと向かう。
これは非常に有難かった。池袋も大久保も、常にこのバックとおともだち(になった記憶はないけど)だったため、新鮮だった。
多分、過去の魔界に住む妖怪たちが声を掛けてきたのも、バッグが原因の一つである。若い子がこんなもの、風俗勤務以外の理由で持っているはずがないからだ。
たま~に社会人でこれを持ってる人を見掛けるのだけど、その度に「何であの人、お仕事バッグ持ってるんだろう」と心の中で思ってしまう。それは私の心が汚れているからだ。
少し脱線するけれど、ローションやボディソープは、大抵百均の容器に入っている。
風俗を上がってからも、百均に行って空き容器を見ると「これローション入ってたやつやな」とかマズイ感想を抱いてしまう。
風俗勤務の悲しい後遺症とも言える。ちなみに今も、まともな目で見られません。ぐすん。
さんざん褒めちぎったけど、この店辞めるんすよ(鼻ほじ)
タイトルの通りである。これ以上言う事ないけど、タイトルの通りである(二回目)
ぶっちゃけ環境も稼ぎも不満は無かったけど、ついに身バレの危機と直面する。
お仕事に行く途中、道玄坂前で知り合いに会ってしまったのだ。
なんとか誤魔化して、向こうも何も疑ってはいなかった(多分)けど、やっぱりホテヘルは身バレの危険性が大きい。
まだこの時、私は昼の仕事と掛け持ちしていたためバレることだけは避けたかった。
しかも知り合いに直面したのは一度だけではない。
「ホテヘルアカン……アカンな……」と思いながら、身バレしない方法を考えた。
しかしやはり、そうなるとホテヘルは選択肢から外さなくてはならない。
だいぶ貯金もできていたし、お金の事で切羽詰まることはなくなっていた。
昼の仕事も相変わらず忙しかったし、思えばここずっと本業と副業の行き来しかしていない。
少し休もうと思い、スタッフに退店の旨を伝えた。
すると、ついにこの店、本性をあらわしやがったのである。
退店したのに、在籍写真がいつまでも消されない。モザイクが掛かっていると言えど、辞めたのだから削除して欲しかった。
何度も何度も言っても、一向に消される気配がない。腹が立った私は、スタッフに電話をした。
その時のスタッフの返答が「いや、戻ってくるかもしれないし、写真載せてた方が集客できるし、……うん、消さないのがあなたのためだと思って」
それを聞いて「辞めたんだから消してくれるのが私のためやぞ」以外感想が浮かばなかった。
完全に苦しい言い訳である。しかも勝手にシフトとか載ってるし。
結局これは「空出勤」というやつで、辞めた子の宣材写真を使いまわし、あたかも女の子の出勤や在籍が多いように見せて、繁盛店っぽく仕立て上げる一つのワザだ。
しかし辞めたこちらからすれば迷惑でしかない。なんだか気分も悪いので、早急に削除して欲しかった。
けれど、店も折れなかった。なんだかずーっと消さない。とにかく消さない。
しかも顔も全部モザイクがかかっていたのに、いつの間にか目出しになっていて、いつかモザイクを全部外されるのでは!?という不安さえ覚えた。
とにかく削除させないとマズイ。焦って「在籍写真 削除」などと検索して、僅かだけど知恵をつけた。
結局、生活安全課に駆け込んで警察に注意してもらうことにまで騒ぎは大きくなってしまった。無事に削除されたけど、そこに辿り着くまで相当な労力を使ってしまったのだ。
正直なところ、このお店は確かに入店する女の子が少なかった。オナクラも、大久保のホテヘルも、新人がドカドカ入ってきていたのだけど、このホテヘルは本当に新人が入ってこない。
多分スカウトとかをあまり使っていなかったのだろう。渋谷なんて風俗はたくさんあるから、スカウトの力が強い店舗へ女の子が次々と流れていく。
(自力でここを見つけたしらいしは、まぁレアな存在だったのだろう。)
そのため、辞めるたびに写真を消していたら女の子がいないことがバレてしまう。だからこんな行動に走ったのだろう。
とは言っても、やはり写真の使いまわしはよくない。モザイクを徐々に外していくあたりも本当にやり方が卑怯だ。
とても働き心地が良かったのに、最後の最後で全てが台無しになってしまった。これには流石の私もがっかりしかしなかった。
更にオチを付けるなら、この店は後に閉店したのである。
本当に女の子が足りなかったんだか、多方面から恨みを買ったんだか何だか知らないが、とにかくHPが無くなっていた。
それを見て、「バーカバーカ!お前のかーちゃんでべそ~wwwww今夜はメシがめっちゃうめぇ~!!!ウヒョヒョヒョ!」とか思ったわけではありません。(めっちゃ思いました)
行き場を無くした子牛はどこへ行く
別に子牛でもないし昼の仕事あるし、そもそもおうし座でもないんだけど、またも風俗業は一旦活動休止という売れないバンドみたいな感じになった。
あの店に警察バージンや生活安全課駆け込みバージンを奪われると思っていなかったし、だいぶ精神力を使ってしまった。やっぱり風俗はある意味ダークな世界なのかもしれない。
「これスカウトとか使えば変な店にいかなくて済むのかなぁ」なんて考えていた。
ドナドナされるのもごめんだけど、いい加減一つの店で腰を落ち着けたかったのだ。
しかしどうスカウトと知り合うのかもよく分かっていない。当時は現在のようにTwitterでスカウトと出会う、なんて時代でもなかったため、途方に暮れた。
「歌舞伎町とか歩けばスカウトに出会えるのかな?」と安易な考えで繁華街を歩くのだけど、見た目が派手なにーちゃんに話しかけられただけで「ヒョッ」となってしまう。
歌舞伎町自体向いてないな、とちょっと落ち込んだ。
さて、副業を失ったしらいしは今後どうなる!?次回へ続く――!!
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