【チャイエス店外日記】中国人エステ嬢と店外デートをしてみてわかったこと
AVの撮影現場を見たことがあるという人は、世の中全体でみてもそう多くはいないと思います。何らかのかたちで作品に出演した経験のある人となると、さらに少数のはずです。
かくいう私も、AVの撮影現場など実際に見たこともなければ、もちろん出演したこともありません。
ただ、AVの撮影現場だったかもしれない光景を目にしたことはあります。それが本当にAVの撮影だったのかどうか自分の中では半信半疑で、いまだにあのときの光景を思い出すたびに、ちょっと複雑な気持ちになってしまうのです。
深夜、川沿いの草むらで絡み合う男女。
これは私が高校2年生のときに体験した話です。
夏休みに入り、毎日のように地元の友人と遊ぶようになっていました。少し遠方の高校に通っていた私は、長い休みの間はどうしても、小中学校時代にいっしょだった地元の友人と遊ぶことが多かったのです。
その日も5、6人で夜遅くまでカラオケボックスで歌っていて、店を出たのは深夜の12時に近かったと思います。駅前で解散すると、帰る方向が同じだったA君とふたりだけになりました。
川沿いの遊歩道を自転車でゆっくり走りながら、週明けから実行することになっている計画について、ふたりで話し合っていました。じつはちょっとした話の流れで、夏休み期間中、ふたりで早朝にジョギングをすることになったのでした。川沿いの遊歩道を自転車で走っていたのも、ジョギングコースの下見を兼ねてのことでした。
遊歩道は綺麗に舗装されていましたが、道幅が狭く、ちょうどふたりが並んで走れるくらいの幅しかありませんでした。歩道の両サイドには芝生があり、場所によっては川沿いの柵と同じ高さまで草が伸びて、ちょっとした草むらのようになっているところもありました。
街路灯の数が少ないせいで深夜の川沿いはかなり暗く、自転車のライトを点けていないと危なくて走れないほどでした。夜ではなく早朝のジョギングにしておいてよかったと、ふたりとも同じことを口にしました。
しばらく走っていると、どこからか女性の声が聞こえてきました。その声を耳にしたとき、私とA君は思わず互いに顔を見合わせました。あきらかに、その手の行為をしているときに出す女性の声だったのです。
川沿いには所々にベンチもありましたから、カップルがいちゃついているのだろうと思いました。
ところが、声がはっきりと聞こえてくるようになると、どうもおかしいと思い始めたのです。
女性が快感によがっているのではなく、嫌がって抵抗しているように聞こえてきたのです。
「いやっ、もうやめてっ、あん、あん…だめ、いやだ、はなしてっ…」
女性のそんな声に混じって、相手を威圧するような男性の声も聞こえてきました。
「おい、なんかやばくないか?」
A君が言い、私もうなずき返しました。
ゆるいカーブを曲がったとき、その声がすぐ近くで聞こえました。
A君の自転車のライトがその先の草むらを照らしたとき、不意に人影が浮かび、私は小さく「あっ」と声を上げました。
草むらの上で男女が重なり合っていて、何も身に着けていない下半身がはっきりと見えました。その隣でべつの男がハンディカメラを手に持って、ふたりの行為を撮影していました。
私たちがその横を通り過ぎようとしたとき、女の上に覆いかぶさっていた男が、ちらっとこっちを振り返りました。男は黒いTシャツを着ていて、女のほうは白っぽいワンピースだったように見えました。女が両脚を大きく開いている姿がはっきりと私の目に焼き付きました。
通り過ぎる瞬間、女が「助けて」と言ったような気がしたのですが、それが実際に聞こえたものだったのか、単なる錯覚だったのか、今となっては思い出すことができません。
しばらく走ったあたりで、私たちは自転車を止めて、先ほどの現場のほうを振り返りました。
「あれ、なんやったん?」
A君が緊張した面持ちで聞いてきました。
「カメラで撮影してたよなあ?」
私はそう言い、決して不都合なものを見てしまったわけではないと、自分自身に言い聞かせようとしました。
「AVの撮影とちがうん?」
「たぶん、そうやろ…。カメラ持ってたもんなあ」
私たちは互いに顔を見合わせてうなずくと、また走り出しました。
私の心の中ではモヤモヤしたものが消えずに残っていました。A君も同じだったのでしょう。ふたりともしばらく無言で、ゆっくりと一定のペースを保ったまま走り続けました。
再びあの光景が。早朝、橋の下で女の体を弄ぶ男たち。
週が明け、私とA君は予定通り早朝のジョギングを開始しました。
しかし、真面目に走ったのは最初の2日間だけで、それ以降はウォーキングになりました。しかもしゃべりながらダラダラと歩いているだけで、そのうち服装まで、当初のスポーツウェアから普段着に変わってしまいました。それでも、朝5時に決まった場所で落ち合うことだけはちゃんとしていて、夏休みが終わる6日前までそれは続きました。
その日もいつもと同じように、ふたりでしゃべりながら川沿いの遊歩道を歩いていました。
時刻はまだ5時過ぎでしたが、すでに蒸し暑さが感じられ、風もほとんどなく、体全体から汗がにじみ出していました。普段はこの時間帯でも、お年寄りの姿をぽつぽつ見かけるのですが、この日は誰とも出会うことがありませんでした。
しばらく歩くと、レンガ色の橋が見えてきました。こちら側の堤防から対岸の堤防へと橋がかかっており、歩行者と自転車だけがその上を通行できるようになっています。
ふと、どこからか人声が聞こえてきました。複数の人間の声で、私はちょっと嫌な予感がしました。たまにどこかの高校のヤンキーが10人くらいでたむろしているという話を聞いていて、まさかこの時間帯にはいないだろうと思いましたが、少し警戒してしまいました。
A君も同じことを思ったようで、足もとに視線を落とし、どことなくそわそわしているように見えました。
橋の前まで来たとき、私たちは思わず足を止めました。その瞬間、私の頭の中に先日のあの光景がよみがえりました。
橋の下の、ちょうど堤防と橋が結合している、天井がいちばん低くなっているあたりに、数人の男の姿がありました。堤防のゆるやかな傾斜の上には、女がひとり仰向けに寝そべっており、男たちはそのまわりを囲むように集まっていました。
男のひとりが女の服をまくり上げ、露わになった胸元を手で弄んでいました。他の男たちはその様子を眺めながらニヤニヤ笑ったり、女に向かって卑猥な言葉を投げかけたりしていました。男たちなみなガラの悪そうな感じに見えました。
橋から少し離れた場所にはもうひとりべつの男が立っていて、ハンディカメラを手に、その様子を撮影していました。女はされるがままで、声を出すこともなければ目立って体を動かすこともありませんでした。
私は怖くなり、A君に目顔で合図すると、来た道を引き返しました。冷静を装いながらゆっくりとした足取りで歩いていましたが、尋常ではない緊張感に押しつぶされそうになっていました。A君もやはり同じだったと思います。堤防へ上がる階段の前まで来て立ち止まると、ふたりして大きな溜め息を漏らしました。
「あれ、なんやったん?」
「このまえ見たやつと同じかなあ」
「AV?」
「だといいんやけど…」
「あまり深く考えんとこ」
A君が言い、私もとりあえずそれに同意しました。
見てはならないものを見てしまった、見て見ぬふりをしてしまった。私の中では不安や恐怖、罪悪感が渦巻いていて、少しばかり混乱していましたが、心の片隅には、あの現場をもういちど見てみたい、できればあそこに自分も加わってみたいという気持ちが少なからずあって、それが余計に私の心境を複雑にしていたのでした。
三度目の正直?午前4時にAVの撮影現場を見学する。
夏休みも残すところあと10日となったとき、A君がこんなことを言い出しました。
「AVの撮影現場、もう一回見てみいひん?」
私はちょっと驚きましたが、彼も心のどこかで同じことを思っていたのだとわかり、自分もちょうどそう考えていたところだと言いました。
「じゃあ、明日はちょっと早めにジョギングしてみる?」
もはやジョギングなどしてはいませんでしたが、いちおうふたりの間ではジョギングと呼んでいたのでした。
「そうやなあ…4時とかどう?」
「おう、4時でええよ。これからは4時にする?」
「うん、明日からは4時にしよう」
そういうわけで、翌朝から4時にいつもの場所で落ち合うことになりました。
それまで複雑な心境だったのが、A君の提案によりすっかり気分が軽くなり、翌朝またここへ来るのが待ち遠しくてなりませんでした。
それから3日間、例の現場に出くわすことはありませんでした。
ところが4日目の朝、三たびあの光景を目撃することになったのです。
さすがに4時だとまだあたりも薄暗く、気温も上がっておらず、汗もほとんどかいていませんでした。
いつものようにふたりでしゃべりながらダラダラ歩いていると、レンガ色の橋のあたりから人声が聞こえてきました。こんどは男たちの声だけでなく、女の声もはっきりと聞こえてきました。
現場はこの前と同じ場所でしたが、シチュエーションが少し違っていて、男も女も一カ所に集まって立っていました。女はこの前と同一人物かどうかはわかりませんが、20代後半か30代くらいに見えました。ノースリーブの白いTシャツに、ピンクのフレアスカートを穿いていました。男たちに詰め寄られ、女は怯えた様子で抵抗する仕草を見せていました。
先頭にいた坊主頭の男が何か口走り、いきなり女の体を抱きかかえると、地面に押し倒しました。
A君が私の肩を叩き、堤防のほうを指で示しました。
私たちは堤防の斜面に上り、コンクリートの四角形のくぼみの中にしゃがみこむと、斜め上から見下ろすかたちで、現場の様子を見ていました。
橋の少し向こうには、やはりハンディカメラを持った男が撮影をしていました。
坊主頭の男が女の上に覆いかぶさり、上半身を弄んでいました。べつの男が手で女の口を塞いで、声を出させないようにしていました。女は手足をばたつかせ、必死に抵抗しました。坊主頭の男が大声を出し、女の顔を平手で打ちました。口を塞いでいた男が女の両手を押さえました。
「誰か助けてー!お願い誰かー!」
女が張り裂けんばかりの声で叫ぶと、その場にいた男たちがいっせいに怒声を浴びせました。
あまりの緊迫感に、私とA君は顔を見合わせました。A君は恐怖のためか顔を引きつらせていました。私は膝が震えそうになるのを抑えるため、両腕で膝を抱えて体育座りの姿勢になりました。エロいものを見てみたいという好奇心からここへやって来た私たちでしたが、気分は高揚するどころか、逆に委縮してしまっていました。
男のひとりが女のスカートをまくり上げ、下着を剥ぎ取るのが見えました。
女は足をばたつかせて激しく抵抗しましたが、両腕を押さえられ、口も塞がれていました。
坊主頭の男がハーフパンツと下着を脱ぐと、女の両脚を抱えて半分まくれ上がったスカートの中に自分の下半身を突っ込みました。女は抵抗しようと体を動かしましたが、男たちの力にねじ伏せられ、どうすることもできない様子でした。
本当にこれはAVの撮影なのか。レ○プの現場ではないのか。そんな考えが脳裏をよぎり、私は胸のあたりにむかつきを覚え、その場で何度も深呼吸をしました。
「俺、もう無理やわ」
A君がそう言って、立ち上がりました。
「おーい!お前らそこで何やっとんねん!」
ハンディカメラを回していた撮影係の男が私たちの姿に気づき、大声を上げました。
私たちは逃げ出そうとしましたが、撮影係の男に呼び止められ、こっちへ降りてこいと言われました。
不安と恐怖と緊張でガチガチになりながら撮影現場のほうへ歩いて行くと、撮影係の男が声をかけてきました。
「君ら、ちょっと見学していくか?こんなん生で見たことないやろ?」
撮影係の男はにこやかに言いました。男たちに囲まれてボコボコにされるのではないかと思っていた私は、ほっとしました。A君が深い安堵の溜め息をつきました。
「カメラに映ったら困るから、俺のうしろで見学してたらええわ」
「ゆっくり見ていき」
他の男もそう声をかけてきました。
さっきまで私の中では、男たちがみなガラの悪い連中ばかりだというイメージがあったのが、よく見てみると、いかにもな雰囲気や人相の人はひとりもいませんでした。
「おい待てって、どこ行くねん!」
坊主頭の男が強い口調で言い、女の腕を引っ張りました。
「もう嫌っ、離してっ!」
女は腕を振りほどこうとしましたが、べつの男にも肩をつかまれ、もとの場所へ引き戻されました。
坊主頭の男が女を突き飛ばし、尻もちをついたところへ罵声を浴びせました。さらにべつの男が女の腰のあたりを足で蹴とばしました。
「嫌っ、やめてっ」
女は泣きそうな声で言い、手で顔を隠してその場に横たわりました。
私はまた怖くなってきて、A君と顔を見合わせました。やはりAVの撮影ではないのではないかと思い始めました。
「あのう…、ぼくら、やっぱり帰らせてもらいます」
A君が撮影係の男に言うと、私も「ジョギングの途中だったので…」と弁解するように言い、申し訳なさそうにペコペコと頭を下げ、そそくさとその場を離れました。
いかにもジョギングの続きを始めましたとばかりに走り出すと、途中から全力疾走し、階段を上って堤防を越え、下の道路までノンストップで向かいました。
赤信号の横断歩道を渡って道路の向こう側へ行くと、たまたま通りかかった早朝出勤のサラリーマン風の男性を呼び止めました。
「あそこで女の人が暴行されて…」
「…その可能性があるんです。はっきりとはわからないですけど」
私とA君はそう言い、身振り手振りを交えて必死に現場の様子を説明しました。
サラリーマン風の男性は何が何だかわからず迷惑そうにしていましたが、ちょうどそこへ、公営の自転車置き場の監視員の男性2人が自転車に乗って通りかかりました。
私は監視員を呼び止め、堤防の向こう側で起きていることを説明しました。サラリーマン風の男性はそのあいだに立ち去ってしまいました。
「それがほんまやったら、大ごとやで」
「君たちが言うように、撮影じゃないの?」
2人の監視員はちょっと困った顔をしましたが、とりあえず見に行ってみると言い、自転車を置いて堤防の階段を上って行きました。
すっかり混乱してしまっていた私たちは、自分たちの自転車を停めてある場所まで走って行くと(なぜ走って行ったのか自分でもわかりません)、ほとんど言葉も交わさず、そのまま家に帰りました。
あれから25年…。
あれは本当にAVの撮影現場だったのか、それともレ○プ事件の現場だったのか。結局わからずじまいになってしまいました。
あのあと監視員の男性2人が何を目撃し、どんな対応をしたのかもわかりませんし、あの場所で事件があったというニュースも聞いたことがありません。もし私が考えていたような事件だったとしたら、おそらく何らかのかたちでニュースになっていたはずです。どこかで私の耳にも入ったはずです。
そうならなかったということは、やはりあれはAVの撮影だった、あるいは合意の上でおこなわれた個人撮影のようなものだったということでしょうか。合意の上で、個人的な趣味としてあのような撮影をしているという考えは、あの当時の私には思い浮かびませんでしたが。
つい先日、あの川沿いの遊歩道を歩いてみたのですが、あの当時とはだいぶ様子が変わっていました。道幅が広くなり、草むらもなく、綺麗なサイクリングコースになっていました。ロードバイクやクロスバイクに乗った人たちが、たくさん行き交っていました。それ以上に街の様子そのものが大きく変わっていて、あの当時の面影はほとんど残っていませんでした。
できることならA君と会って、もういちどあのときのことをじっくり思い出してみたいのですが、それはできそうにありません。
じつは今から18年前、私とA君は大きな仲たがいをしてしまい、それ以来いちども会っていないのです。どちらかが一方的に悪かったということではなく、後日どちらかが謝れば、おそらくもとの関係に戻れたはずなのですが、結局そのきっかけをつかめないまま18年が過ぎてしまいました。
25年前のあの出来事を思い出すたびに、いまA君がどうしているのか気になり、少しばかりつらい気持ちになり、後悔の念が湧いてきます。
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