女子大生が浣腸プレイにハマって、人間をやめようかと思った話をする。
https://www.flickr.com/photos/franciscojgonzalez/8068231726/
“ねぇねぇ、わたし、芸能人にナンパされちゃった!”。
そう報告してきたのは友人のAである。彼女はわたしの長年来の親友で、相当な美人だ。そして、お金と男性に愛されているとしか言いようがない人生経験を歩んできている。例えば、デリヘル客から数百万をせしめたり何故かいつも付き合う男性から貢いでもらったりなど、とにかくエピソードが絶えない女性だ。そんなAが今度は芸能人にナンパされたのである。
“えっ! いいなぁ! どこで?”
思わずわたしがこう返すと、彼女はなんとスターバックスでナンパされたというのだ。彼女は学校帰り。カフェ好きで、よく休憩をとっていた。コーヒーを飲みながらまったりとLINEをチェックし、にやにやしていた彼女。
“すみません”
ふと、後ろから声がした。振り返ると、尋常じゃないぐらいのイケメンが立っていたのだ。相当入念に手入れされているであろう肌や髪、爽やかで濃すぎない顔立ち。スーツも垢抜けていて、上質な感じが人目でわかる。異次元さが漂うイケメンだった。
これだけのイケメンにナンパされることは中々ない。彼女は思わず番号を教えてしまう。まぁ、彼女は大抵の場合とりあえず番号を教えてみる・断らないというモットーを持っているのだが。
LINEを交換したあと、本名でググってみた。なんと、所属事務所や公式ブログがヒットする。動画まであった。まず、間違いない。彼は駆け出しの芸能人らしい。見れば、そこそこの出演歴もあるようだ。
“さっきはいきなりごめんね。タイプだったから、連絡先聞いちゃった”
連絡先を聞いてすぐ、スマートに駆け引きしてくる。第一印象は、なんとも素敵な男性だった。
女はこうして! ああして! 注文が多すぎるの巻
そしていざデートに出かけた友人Aと芸能人。飲みに行こうということになり、予約してくれたほどよく雰囲気の良い店に入った二人。芸能人だから、とアピールしてくることはなかった。下手に気取った雰囲気もなく、ここまでは完璧だったのだが…。
“じゃあ、とりあえず生で”
そうAが言った瞬間、男性は思い切り顔を顰めた。
“女の子なのに、生とか飲んじゃうの?”
えっ、と面食らうA。とりあえず生一杯、は乾杯の定石なのではないだろうか。だが、男性にとってはそういうものではないらしい。
“女子はさ、やっぱワインとか飲んでほしいよね。グビグビ飲むんじゃなくて、なんかちびりちびり飲むみたいな、そんな品が欲しい”
知るかよ! 内心Aは突っ込んだ。とはいえ、芸能人と飲むことなんてなかなかにない機会である。とりあえずワインに注文を直し、酔いたいところを男性に従って我慢した。だが、驚くべきことにこれで終わりではなかったのである…。
潔癖症すぎる部屋。そして逃亡。
そして、部屋で飲みなおそうということになった。となれば、何かあるかも…と思うのが女性である。さきほどあまり酒も飲めなかったAは緊張気味だった。対して、男性はどうやら酒が弱いらしい。しゃべり方も丸くなり、もはやにゃんにゃんしているような雰囲気である。格好いい男性に甘えられるから許せるものの、少し引き気味のA。
“僕ちゃん酔っぱらったかもー”
そうなの、よしよしとあしらいながら、部屋についた。とても新しい。綺麗なマンションだった。玄関に入ると、ルームフレグランスのような良い匂いが薫る。ところどころに観葉植物も植えてあり、テンションが上がるA。だが、まだ早かった。
“あっ、一回マットでしっかり拭いてから上がってねー。髪の毛、長いなー。抜けないかな”
男性はなんと、ストッキングを履いた足を一度キレイに拭いたうえで部屋にあがるよう指示してきたのである。しかも、髪の毛が長いって…他に女性でも中に上げるつもりなのだろうか。今回に至ってはさすがのAも一瞬ムッとした顔をしてしまった。
“今ちょっと引いたー? ごめん、俺ってSだからさー”
そういえばところどころで飲みの席でこのセリフを言っていた。何だかこのセリフ、正直なところ女性からしてみればムカつくのだ。ベタベタされ倒すのも疲れてしまうが、女性にあえて冷たくしたりオラオラな俺を演じてみたりしてモテようとしているのは見え見えなのである…。女性の中には、確かに冷たくされるのが好きだという稀有な人種もいるが(たとえばライターであるわたしとか)あくまでもそれはMの需要を満たしてくれるSである。やたらと女性に駄目出しをしたり苛つかせる男性はこの限りではない。
苦笑いを浮かべつつ部屋に上がるA。どこからともなくワインとお洒落なグラスを取出し、乾杯する。
“やっぱり女の子は素直な子がいいよね。うん、いい子いい子”
そう言って男性はAの頭を撫でる。酔っぱらうと素が出るタイプらしい。どんどん幻滅していく…。
と、ふいに唇が重なった。
そのまま、何度も何度も舌を絡めてくる。なんてことのない、普通のキスだった。生温かさが伝わる。男性がAの顎を優しい手付きで掴んだ。ドキドキしはじめるA。やっぱりこういう運びがうまいんだなぁ…と感激したのも束の間。なんと、男性はだらりと唾液を垂らしてきたのである。
“ええええええっ”
どろりとした透明な液体が口に入ってくる。なんとも言えない、口の中の温度差が伝わってくる瞬間。Aはドン引きしてしまった。慌ててワインを流し込む。そんな様子を、男性は顔を顰めながら見ていた。
“はぁ? 俺の唾がやなわけ?”
“えっ…唾ってさあ…なくない? …口の中、気持ち悪いんだけど”
“ふざけんなよ!”
バシッ。机を思い切り拳で叩く。何この人、怖い…。Aは恐怖を覚えた。きっと、この人の素はこれなんだろう。サディスティックというか、自己陶酔型というか。SはSでも質が悪いのが、このタイプ。相手の気持ちだなんて、まったく考えていないのだ。
“帰ります。ごめんなさい”
Aはそそくさと荷物をまとめだした。必死に引き止めようとする男性。その手を振り払い、なんとか逃げ出した。もちろん、もう彼と会う気はない。
後日談。
そして翌日である。男性から連絡が入った。内容は、“ピアスを忘れているから今夜取りに来い”というもの。もう彼の家に上がるのも嫌だったAは、一言捨てておいてくださいと連絡を入れた。だが、男性は取りに来いとの一点張りである。どうやら文面から察するに、こういうことらしい。彼の家に他の女性が明日の夜遊びに来るようなのである。そのため、女性モノのピアスがあるのは困ることなのだ。きっと、夜な夜ないろんな女性をあの部屋に連れ込んでいるのだろう…。
Aは黙って携帯を閉じた。そんな、後味が悪いナンパの話である。
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