怪しいチャイエスサイトに一時期表示されていた住所を辿って待っていたのは…

画像をタップすると表示される怪しい住所と電話番号の謎

 
中国エステが大好きな私は、日頃からよくスマホでエステ情報サイトを閲覧しています。
新店がオープンしていないか、どこかの店の割引情報が出ていないか、などをチェックしているのです。

あるとき、これまで見たことも聞いたこともない名前の店が掲載されているのに気づいて、画面をスクロールする手を止めました。しかし〝NEW OPEN〟の表示がなく、私が見落としていたのか、あるいは既存店舗が店名を変え、新店扱いにはせずに掲載しているのか、どちらかだろうと思いました。
 
料金ページを見ると、通常料金60分15000円となっており、このサイトを見たことを伝えると2000円引きになると書かれてありました。料金から考えて、本番ありの違法エステの可能性が高いと思いました。

場所は大阪の十三でした。住所検索し、Googleストリートビューで確認したところ、詳しい所在地が判明しました。中国エステの違法店ばかりが並ぶ一角で、夜おそく足を踏み入れるとちょっと怖い場所です。ネオンが点った細い路地のようなところで客引きの女の子とおっちゃんが立って手招きしてきます。チャイエス初心者がひとりで歩くには勇気がいる場所です。
 
私はスマホをスクロールしながら、その店の情報を隅々まで閲覧しました。
外観や店内の写真が掲載されていて、もっとじっくり見ようと思ってタップしてみましたが、拡大表示にはなりませんでした。

よく見ると、シャワールームの写真の下にだけ短い青いラインが表示されていました。
こういう青いラインをタップすると、たいてい拡大表示になったり、べつのページに飛んだりするものです。
 
私はそれをタップしてみました。
するとページが切り替わり、080で始まる携帯電話の番号と、大阪市内のとある住所が表示されたのです。

こういうことは初めてだったので、ちょっと不審に思いました。
確認してみると、電話番号も住所も、その店のものではありませんでした。
住所からだいたいの場所がつかめたので、さらに詳しく知るために検索してみました。
 
新大阪駅の裏手あたりの、古いオフィス街であることが判明しました。
ストリートビューで確認すると、私も何度か通ったことがある場所でした。
住所にビル名はありませんでしたが、部屋番号は書かれていました。

ストリートビューでビルもほぼ特定でき、いつものようにちょっとスリルを味わってみたい気持ちが湧いてきた私は、住所に書かれたその番号の部屋へ行ってみようと思いました。前もって電話をかけることはせず、こっそりその部屋がある場所を訪れてみることにしました。 

ヤクザ風の男たちにからまれる

休日だとオフィスビルは閉まっている場合があるので、平日の昼間に行きました。
新大阪駅の裏手はひっそりとしていて、オフィス街といっても古ぼけたビルがぽつぽつと建っているだけで、空き地になっていたり、工事中だったりする場所がいくつもありました。

ストリートビューで確認したビルは、そのあたりでは比較的新しい感じの建物で、人の出入りも少なくありませんでした。
オートロックにはなっておらず、管理人もいなかったので、すんなり中へ入ることができました。
 
住所に書かれていた５階の部屋へ向かうため、エレベーターに乗りました。
５Fのボタンを押し、ドアが閉まりかけたとき、「おーい、ちょっと待ってくれー！」という声が聞こえ、私は慌ててドアを開けました。
ビルの駐車場のほうから男がふたり速足でやって来て、エレベーターに乗り込んできました。
 
ふたりの男は、見るからにヤクザっぽい雰囲気でした。
60代くらいの小柄なスキンヘッドの男は、口に爪楊枝をくわえていて、鋭い目つきで一瞬、私のほうを見てきました。もうひとりは40代後半くらいで、キャップをかぶり、クラッチバッグを手に持っていました。
私は隅のほうに立ち、男たちのほうを見ないようにしていました。
 
ドアが閉まり、エレベーターが動き始めたとき、キャップの男がいきなり私のほうを振り返り、「あんたも５階か？どこの人間や？」と聞いてきました。
私はとっさに男のほうを見ましたが、何のことかわからず、ぽかんとしてしまいました。
「５階やろ？どこ行くんや？」
男が語気を強めました。

どうやら男たちも５階に行くらしく、５Fのランプだけしか点いていないのに気づいて、私に聞いてきたようでした。
私は恐怖で体が固まってしまっていましたが、なんとかとっさに作り話を思いつき、「ぼく酒屋なんです。５階の会社に集金に行くところなんです」と言いました。

すると男は、疑り深そうな顔で私をじろじろと見回してきました。
「どこの酒屋や？」
「え？あ、あのう、十三のほうです」
「ほお、十三かいな」
そう言うと、また私のことをねめつけるように見てきました。

「もうやめとけや。こんなかわいい兄ちゃんつかまえて何がしたいねんなあ」
スキンヘッドの男が横から口をはさみ、「なあ？ごめんな兄ちゃん」と私に言いました。
「いえ、大丈夫です」
私は曖昧に返事をし、ぺこぺこと頭を下げました。
 
５階に着き、ドアが開くと、男たちはそそくさと出て行ってしまいました。
私はほっと溜め息をつくと、男たちが廊下の突き当りの角を曲がって姿が見えなくなったのを確認してから、エレベーターを降りました。

どういうわけか、たどり着いた先は…

目当ての部屋である512号室を探しました。部屋番号を確認しながら廊下を歩いて行き、突き当りの角を曲がりました。先ほど、あの男たちが姿を消した方向です。何だか嫌な予感がしました。
 
512号室の前で立ち止まったとき、室内から話声が聞こえてきて、私は慌てて階段の踊り場に隠れました。
部屋から出てきたのは、先ほどの男たちでした。

キャップの男はえらく苛立った様子で、室内に向かって強い口調で何か言っていました。
「お前がぼさっとしとるからやろがっ！今日中に連れてこい！」といった言葉が聞こえてきました。

スキンヘッドの男がなだめるように、「もうええがな。済んだことやないか」と言いました。
 
男たちがエレベーターのほうへ歩いて行ったのを見届けてから、私は再び512号室の前へ行きました。表札には「(株)NEXT CHANCE（仮名）」と書かれてありました。

ああいうヤクザ風の男たちが出入りする会社ですから、もしかするとどこかの組のフロント企業、あるいは組事務所そのものかもしれないと思いました。
 
私は家に帰ってから、その会社名と住所で検索してみました。
すると、512号室では何もヒットしなかったのですが、同じビルの別の階にもうひとつ、まったく同じ社名の部屋が見つかったのです。

その会社は金プラ業者でした。どうやらその部屋が事務所で、店舗は別の住所にありました。
おそらく512号室もその関係の事務所なのでしょう。ひょっとしたら闇金か何かの可能性もあるなあと思い、私は怖くなりました。
 
それにしてもなぜ、中国エステのサイトから金プラ業者にたどり着いてしまったのか。
エステのスタッフが設定を間違えたとは考えにくいと思います。写真の下に青いラインがあり、明らかにそこをタップするようになっていました。

意図的にそのような設定をしたとしか思えません。タップすると表示される住所と電話番号に、客を誘導する目的だったのではないでしょうか。
 
後日、その中国エステのサイトを見てみると、写真の下の青いラインはそのままでしたが、タップしても何も表示されなくなっていました。金プラ業者の住所と電話番号が表示されるようになっていたのは、やはり意図的なものではなく、何らかのミス、あるいはいたずらだったのでしょうか。スタッフがそれに気づいて削除したということなのでしょうか。

事実は不明のままですが、なんとも危なっかしい出来事でした。あのビルを訪問する前に電話をかけなくてよかったと思いました。

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