東京都渋谷区 某アパレル関係勤務 Rさんの話
Rさんと私が知り合ったのは、コロナで騒ぎになる少し前の六本木のスポーツバーでした。私はバーテンダーをしていました。
彼女の好きなカクテルは「ビーフィータージンのトニックウォーター割り」。いわゆる「ジントニック」です。
ジンへのこだわりが強かったので、いろいろと話をするようになり…最初は男性同伴だったRさんは、次第に一人でも来店するようになりました。
そんなRさん。
華奢で明るく、名門大学も出ている、とてもアクティブな女性。週末はサバイバルゲームへ出かけるそうです。バーでは1時間に一人は男性が口説きにかかる。そんな女性でした。
私が彼女にカクテルシェイカーを指名されるようになって、数回目の夜。彼女は私が「ヌードカメラマン」をしている事を店のスタッフから聞いたらしく…
『どんな写真撮っているんですか?』と聞いてきました。私は彼女に写真や雑誌などを紹介しました。そして、その御礼にと こんな話を聞かせてくれました。
Rさんが住んでいるのは渋谷区の女性専用のマンション
最近は女性専用のマンション。そういうマンションが増えているらしいです。そこはオートロック等がない代わりに、受付には24時間誰かが居てくれる。ご近所トラブルも無く、いい部屋を見つけたと最初は思ったそうです。
そのマンションはエレベーターを居りて、すぐ左右に長い廊下になっていて、エレベーターを中心に…
右側に「5部屋」左側に「2部屋」と別れている構造になっていました。
彼女はその中の左側のエレベーター側。要するに、「7部屋」ある廊下の右から「6番目」左から「2番目」の部屋に住んでいました。
Rさんは話を続けます。
彼女が唯一気になるのは、その廊下側に面して「浴室」があることでした。丁度目線の高さに「小窓」があり、気を抜いてしまうと…
立ち上がってシャワーを浴びているときに、「隣人のSさん」と目があって気恥ずかしい時もあったそうです。覗こうと思えば、誰でも覗ける。そんな小窓がついています。
それでも女性専用で、エレベーターには「監視カメラ」もあり、受付もある為さほど気にする事もなかったそうです。
ですが、いくら女性専用マンションといっても「彼氏」や「家族」の出入りはあるので…
Rさんは入浴中、小窓を閉めるように癖をつけていました。
そんな部屋での暮らしが数ヶ月たった頃…Rさんは「隣人のSさん」の部屋に「一人の男性」が入っていく姿を目撃しました。
Rさんは『彼氏でも出来たのかな?』と思う反面、小窓に鍵も掛けるようになりました。
というのも、数回目撃したその男性が、お世辞にもかっこいいとは言えず、それを抜きにしても少し挙動不審だったからです。
【Rさんが見た男性の不審な行動とは?】
① 右側の一番奥の部屋の前に立っていた。
Sさんの彼氏と思われる男性を一番最初にRさんが見たのは、真逆の部屋の前でした。その時Rさんは『部屋を間違えたのかな?』と思って深く考えませんでした。
② 男性の出入りする時間帯
Rさんはアパレルの仕事をしているので、ナイトワークのように遅い帰りになったりしません。安定した勤務で、定時に帰ってきます。
それがだいたい「19時30分~20時」でした。
最初に男性を目撃したのが、その時間帯で、その時に右側の奥の部屋の前に立っていました。
そして二回目に見た時も同じ時間帯で、今度は、一番左側の部屋に入っていきました。そこで『あの時は部屋を間違えたのかな?』と思ったわけです。
しかし、様子が気になったのは3回目以降。
その男性を見かけるのが「22時」近くばかりになりました。その時間帯、Rさんはとっくに家の中に居ます。それでも男性の存在に気がつくということは唯一廊下に面している「風呂場」にいる時間帯。
シャワータイムの時間だったのです。
Rさんがシャワーを浴びていると、小窓に左から右へ流れていく背の高い影を見かけました。Rさんはしまったと思ったそうです。
Rさんがその男性を初めて見た日から…Rさんが小窓をしめて、鍵をかける癖をつけるまではしばらくありました。
その間には、小窓を閉めていない日もよくありました。22時なんかに誰も通らないだろうと高をくくっていたRさんは…
これまでにも何度か、あったかもしれない。見られていたかもしれない。そう思って、後悔しました。それから鍵まで掛けるようになったんだそうです。
バーテンダーの最低な考え方。 証拠写真の丸いシール。
ここまで聞いて、私は正直「女性の一人暮らしは大変だな」ぐらいに思っていました。それと、本当に最低な職業病なのですが…
「あー練習台かな?」と思いました。
というのも、バーテンダーを使ってトークの練習をする方は多いからです。さらにわざと「セックス」や「痴漢」や「セクハラ」等の話をして…
エッチな想像をさせて、男性を口説くというのは「バー」での常套手段なのです。
だから「覗き」を連想させて…というそういうテクニックなのかなと…最低ですけど私は考えていました。
このRさんでもそういう話をするのか、意外だなと。しかし、彼女はエッチなムードどころか怯えた様子である写真を見せてきました。
それはシールが貼られた窓の写真でした。
そして続けて男性の不審な行動の3つ目を話し始めました。
③ 男性貼った丸いシールと複数の人影
Rさんは、男性に不信感を抱いていたので、鍵も掛け、時間帯も「20時」と家に帰ってすぐに浴びるようにしたそうです。それからしばらくは何事もありませんでしたが、ある時…廊下の右側に住んでいる人からこんな話をされたんだそうです。
「ねぇ、お風呂の窓にシールついてない?」
Rさんは、急いで自分の部屋を確認しました。シールは付いていませんでした。詳しく話を聞いてみると…
廊下の右側の二件の小窓に、丸くて白いシールが貼られていたとRさんは聞かされました。
Rさんは瞬間的に、パッとあの男性の事が思い浮かびました。Rさんがその話を、その場に居た同じフロアの住人としてみると…
シールをはられていない、一人の住人もRさんと同様に…小窓に人影が通っていくのをみたそうです。
しかも、一人ではなく、毎回「複数の大きな人影」が右端の方へ流れて行くんだそうです。その人の部屋は「7部屋」ある廊下の右から「2番目」左から「6番目」の部屋です。
一番右端の部屋へと向かっていく複数の影。
Rさんが見た、右端の家の前に立っていた男性。シールが貼られていたひとつの部屋も、一番右端の部屋の小窓でした。
Rさんはその時、ある仮説は私に話してくれました。
そのシールは、覗きが出来る部屋という印なのではないかと…男性の「覗きが趣味のグループ」が存在していて、そのサインなのではないかと。
もし、そうだとすると…
・男性を部屋に入れていた「一番左端の住人」もグルなのか?
・受付はちゃんと機能しているのか?
・Rさんも鍵を掛けていなければシールを貼られていたのか?
これは謎です。さらにRさんは後日談を話してくれました。Rさんは例の右から二番目の住人。シールを貼られていない複数の影を見た人と話しをしてみたそうです。
その人はいつも窓に映る影しか見たことがなく、Rさんの見ていたあの男性かどうかは理解らなかったそうです。ただ、その人はあまりにも気になって、影が通るとしばらくの間様子を伺っていました。
そしてあることに気がついたそうです。
影が通ったあと、右端の家のドアが開くような音は一切しない事。そしてエレベーターへ向かって戻っていく影を一度も見たことがない事。
「通り過ぎるとね、ふぅっと消えちゃうんだよね」
と言っていたそうです。
Rさんが見た影はなんなのか?
例のシールはなんだったのか?
もしも、見知らぬシールが小窓に貼られていたら、気をつけた方が良いのかもしれませんね。空き巣は空き巣同士のサインを持っていると言われています。同様のものかもしれません。
私はバーではよく、こういう話をします。
私は、職業柄、いろんな話を集めています。主にアダルティックな話ですが…たまにこういう不思議な話を聞きます。
その信憑性や事実性には興味がありません。確かめて追求したところで何にもなりませんので…
ただ、どんな話でも集めておくのがこの商売の鉄則なのです。女性を口説く上では…どんな話でも知っておいて損はないでしょう。