「男が小便をするときは立ったままするものだ」
私は子供の頃からずっとそう思ってきましたし、実際にそうしてきました。
しかし最近、その考えが少し揺らぎ始めています。
公衆トイレの使い方についても、近頃は事情が違ってきているようです。
学校のトイレなんかも、昔と比べるとだいぶ変わってきていると聞きます。
今回は、男性のトイレ事情について、私なりに気になったことを思いつくままに書いてみたいと思います。
べつにタイムリーな話題でもありませんし、真剣に考えるようなテーマでもないのですが、なんとなく自分の中でモヤモヤしていたので、いちど文章にしてみようと思いました。
トイレは個室が当たり前?
男性のみなさんは、公衆トイレで小便をするとき、どの便器を使いますか?
私は基本的に、小便用の立ってするタイプの便器を使います。
ただし、手荷物があって置く場所もない場合は個室に入ります。
以前、区役所へHIVと性感染症の検査を受けに行ったとき、尿検査の際に紙コップとスポイト、採尿管、さらに持ち運び用のビニール袋まで渡され、仕方なく荷物を置く場所がある個室のほうを利用したことがありました。
手荷物もなく、小便だけしたいとき、立ってする小便器と個室の両方があれば、多くの男性は立ってするほうを選ぶのではないでしょうか?
もちろん、漏れそうで我慢できないときに小便器がすべて利用中でふさがっていれば、個室に駆け込むかもしれませんが。
ところが最近、小便をするだけのときも個室を利用する男性が増えていると聞きます。
とくに10代や20代の若い人たちに多く見られるようです。
私と同年代(40代)かそれより上の世代では、ほとんど見られない光景です。
以前、私が学習塾の講師をしていたとき、アルバイトの大学生に聞いてみたことがありました。彼はほぼ100パーセント個室を利用すると言いました。
「家のトイレは個室がふつうだから、外でも個室に入るのが自然じゃないんすか?」
当然のことと言わんばかりの顔でそう口にした彼。
「なら、おっさんたちが住んでた家のトイレはむき出しの状態やったんかいっ!家じゅうにウンコの臭いが充満してたっちゅうことかいっ!」
とツッコミを入れたくなりましたが、そのときは居酒屋で食事中でしたので、ウンコの話はやめておきました。
「家のトイレは個室だから…」
と、その大学生は言いましたが、本当にそれだけが理由なのでしょうか?なんとなく腑に落ちない感じがしました。
二年くらい前、ある大学でおこなわれたイベントに参加する機会があったのですが、開演までにトイレを済ませておこうと思い、キャンパス内のトイレに入りました。
来場者の数が多く、どの階のトイレにも行列ができていました。
だいぶ尿意を催していて、そろそろ我慢の限界が近づいていた私は焦ってしまい、列の先頭まで行ってトイレの中を覗いてみました。時間がかかりそうなら、べつのトイレを探そうと思いました。
中を覗いてみて唖然としました。
立ってするほうの便器がガラ空きだったのです。
行列ができていたのは個室のほうだけだったのです。
その光景に拍子抜けした私は、思わず「はあ?」とイラつき、並んでいる人たちを押しのけるようにして中へ入って行くと、ガラ空きの便器の前に立ち、ぽろんとイチモツを振り出し、勢いまかせに小便を放出してやりました。
漏れそうなのをじっと我慢して、真面目に列に並んでいた自分はいったい何だったのかと思いました。
私のあとから、同じように小便器がガラ空きなのに気づいた人たちが、やはり拍子抜けした顔で入ってきました。
個室に入るために並んでいた人たちの多くは10代から20代くらいの若者で、おっさんはみな小便器の前に立って用を足していました。
家のトイレが個室だから…という理由はわからなくはないです。
個室の中にいると、たしかに安心です。緊張もしませんし、万が一、誤って小便をまき散らしてしまったとしても、慌てず対処することができます。
「安心」という点から考えると、小便をするためだけに個室を利用する人というのは、他人の目が気になる人たちなのではないでしょうか。
私も、若い頃は恥ずかしいと思ったことがありました。
すぐ隣に見ず知らずの他人がいるところでパンツを下ろすわけですから、まったく恥ずかしくないといえば嘘になります。
たまに、こっちが用を足しているときに覗き込んでくる人がいて、嫌な思いをしたこともありました。
そのことを職場の先輩に話したら、「そいつはゲイなんや」と言いましたが、それだけではないと思いました。他人の股間を覗き込んで、相手が恥ずかしがるのを楽しんでいる人がいるのだと思いました。
そういうことを考えると、小便器の前で立ってするのを恥ずかしいと思う人がいても、たしかに不思議ではありません。とくに若い男性ならそう感じるのではないでしょうか。
ただ、歳を重ねていくうちにだんだん羞恥心がなくなっていき、小便器の前に立ってすることに抵抗がなくなっていくことはあると思いますが…。
学校のトイレ事情
最近は学校のトイレもきれいになり、設備も先進的だと聞きます。とくに小学校や中学校では、個室の和式便器がなくなり、すべて洋式に取り換えられている学校が多いそうです。
今どき和式の便器がある家やマンションなんて珍しいですから、学校のトイレが和式のままだと戸惑う子供もいるにちがいありません。
また、学校によってはすべて個室化され、立ってする小便器がひとつもないところもあるそうです。やはり他人の目が気になってできないという人が、若い世代で増えているのかもしれません。
「小」ならまだしも、「大」のほうを学校でするのは恥ずかしいという子供は多いです。
それは決してここ最近の傾向ではなく、私が小学生だった頃もそういう子供はたくさんいました。
誰しも人前で用を足すのは、なんとなく気恥ずかしいものです(個室の中であっても)。
ある私立学校では、トイレの壁面に「滝」が流れていて、用を足している音が他人に聞こえないように配慮されているところもあるといいます。「滝」といっても流れの激しいものではなく、せせらぎのような感じだそうです。
女性が用を足す際に、いちど水を流しておいて、恥ずかしい音が外へ漏れないようにすることはあると思いますが、その私立学校では男女の区別なく、涼し気な「滝の音」が聞こえるようになっているのです。
トイレ中のプライバシーを守るためのアイデアなのでしょうが、お腹の調子が悪くて、あまりに激しい音が鳴ってしまったときはどうでしょうか?逆に滝の音がかき消されてしまいそうな気がするのですが。そう考えるのは私だけでしょうか…。
また、におい対策のほうはどうなっているのか、それも知りたいところです。
「立ちション」している人を見かけなくなった
ここ10年ほどのあいだで、立ちションしている人をあまり見かけなくなったような気がします。飲食店が密集する地域でも、最近はまず見かけません。
電柱や駐車場のフェンス、金網に向かって小便を放っている酔客を最後に見たのは、いったいいつのことやら…。
私が小学生の頃は、学校帰りや、公園、河川敷などに遊びに行ったときには、よく立ちションをしていました。公園や河川敷にはトイレがあったはずですが、なぜか子供たちはトイレに行こうとせず、そのへんの草むらや木がはえている場所で立ちションをしていました。
中には、学校帰りに線路わきの植え込みで大便をする同級生もいました。
大阪のディープタウン十三(じゅうそう)には、「しょんべん横丁」と呼ばれる場所があります。大衆酒場やホルモン焼き屋などが軒を連ねる駅裏の細い通りなのですが、昔は近くにトイレがなく、酔客の多くが線路沿いの壁に向かって用を足していたことから、そのような呼び名が付いたと言われています。
そんな「しょんべん横丁」にも今では公衆トイレが設置され、立ちションをする酔客も見かけなくなりました。最近は女性客も増えてきましたから、堂々とイチモツを放り出して用を足す男性もいないでしょう。
「立ちション」とは、トイレに行かずにそのへんの道端で用を足すことを意味しますが、そもそも多くの男性は、トイレに行っても立ったまま小便をするわけですから、拡大解釈するならば、「立ちション」が普通だともいえます。
では、「立ちション」に対して「座りション」なるものは存在するのでしょうか?
そういった用語を聞いたことはありませんが、それらしい行為は存在します。
じつは最近、この「座りション」をする男性が増えているというのです。
立ってするor座ってする?あなたはどっち?
「立ったままオシッコするのが理解できない」
「床がオシッコで汚れるから座ってして!」
こういった意見が女性のあいだでよく聞かれます。比較的若い世代の女性が、こういうことを気にするようです。
たしかに、洋式便器というのは椅子みたいな形をしていて、座って用を足すことを目的に作られているように見えます。
しかし、男性は子供の頃から「小便は立ったままするもの」と刷り込まれている場合がありますから、たとえ洋式便器であっても、小便をするだけならわざわざ座る必要はないと考えてしまうものです。
それに、パンツを下ろしたときにどういうわけだかイチモツが半勃起状態になっていることもあって、その状態のまま便座に座って用を足すのが難しいことがあるのです。
半勃起(あるいはフル勃起)状態で、便座に座って小便をしようとすれば、それこそ床や壁にまき散らしてしまうことになりかねません。
床にこぼさずに用を足そうと思うと、イチモツがフニャッと下を向いている必要があるのです。
しかし、便座に座らず立ったままであれば、多少勃起していても、なんとかコントロールし、便器の中へ収めることができます。結果的に床や壁を汚さずに済むわけです。
また人によっては、座ってすると残尿感があり、立ち上がったあとでまたしたくなるというパターンもあるそうです。
そう考えると、男性にとっては、立ったまま小便をするほうが合理的だといえます。
男性が立ったまま小便をすることに苦言を呈する女性って、昔からいたのでしょうか?
それともここ最近の傾向なのでしょうか?
私も以前、ある女性の家にお邪魔したとき、立ったまま小便をして怒られたことがありました。べつにまき散らしたわけではありませんし、便座を汚したりもしていません。
トイレから出てくると彼女が立っていて、私の顔をじっと見てきました。
「ちゃんと座ってした?」
「ううん、立ってした」
「もおー、なんでー?掃除してきてー!」
そう言われ、汚れてもない便座や床を拭き掃除させられたのでした。
そういえば、私の実家でトイレを使った親戚の叔父が、「ちゃんと座ってしたからなー」と、私の母に言っていたのを覚えています。
母は「そんなん気にせんでええよ。うちには若い娘なんかおらんから」と言いました。
その叔父には大学生の娘がいて、「立ったまま小便したら娘が怒るんや」と愚痴をこぼしていました。
神経質…いやいや、きれい好きな女性が増えてきたということでしょうか。
まとめ
男性のトイレ事情について、私なりに気になっていたことを、思いつくままに書いてみました。
トイレの使い方というのは千差万別です。いずれかを肯定したり否定したりするつもりはまったくありません。それぞれの人が、それぞれに合った「トイレらいふ」を楽しめばいいと思います。
トイレの時間というのは、リラックスするための時間でもあると、私は思っています。
リラックスできるトイレの使い方を選択することが、その人にとってベストな「トイレらいふ」につながるのではないでしょうか。
ほっとひと息つけるトイレの時間を、大切にしていただければと思います。