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中華料理屋の出前の少年に嫌がらせをする検察官の男に、思いがけない制裁が下りた話し
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中国残留邦人として来日した僕(チャン・イー、18歳)は、母方の親戚にあたるリュウさんの店「好好(ハオハオ)」で働き始めて3ヵ月になる。
店の人たちはみな親切で、いちばん年下の僕を可愛がってくれている。仕事にもだいぶ慣れてきた。
店主のリュウさんと彼の奥さん、その姪っ子のジン、料理人の松田さん、そして僕の5人で店を切り盛りしているが、それでも人手不足に感じるくらい忙しい日もある。
店はオフィス街からほど近い場所にあり、昼時になるとサラリーマン客で店は満員になる。
出前に行くことも多く(これはもっぱら僕の仕事だが)、昼時の約2時間は足を止める暇もなく、店とオフィス街を行ったり来たりしている。
出前を持って行く先は官公庁などの役所が多い。理由はわからないが、民間のサラリーマンは外へ食べに出たがる人が多く、公務員は役所の中で食べたがるのだと、リュウさんは話していた。
民間のサラリーマンには明るくて気さくな人が多いが、公務員は陰気で無口な感じの人が多いというのが、僕がこの仕事をするようになったときに持った第一印象だった。
僕はこの仕事が嫌いではないし、むしろ楽しんでいる。出前に行った先で、お客さんの多くは「ありがとう」と言ってくれる。こっちがお金をもらう立場なのに、お客さんのほうが礼を言ってくるのだ。しかも笑顔で。
こういった日本ならではの習慣に最初は少し戸惑ったが、今ではだいぶ理解できるようになってきた。こういうかたちでコミュニケーションを楽しむことで、お互い気持ちよくなれるのだ。それに気づいてから、出前に行くのがだんだん楽しくなっていった。
しかし、出前に行くのが嫌な場所がひとつだけある。地方検察庁だ。
たいてい同じ男(30歳くらいの、黒ぶち眼鏡をかけた検察官だ)が注文してくるのだが、そいつがものすごく嫌なやつなのだ。
僕が人生であんな屈辱を味わったのは、あのときが初めてだった。
出前を持って行った先は、20人くらいの検察官が机を並べている大部屋だった。
「こんにちはー、ハオハオでーす!」と告げると、ひとりの男が「こっち」と言い、僕のほうを見ずに手招きした。
デスクの上が散らかっていたので、「どちらに置きましょうか?」と聞くと、検察官の男は無言で、どこかよくわからない場所を顎で示した。
「どこですか?」と僕が聞くと、男は「チッ」と舌打ちし、デスクの上の散らかった書類を一カ所にまとめた。
空いたスペースに注文のラーメンと餃子を置いた。
「1150円です」
僕が言うと、検察官の男は面倒くさそうに財布から千円札と小銭を取り出した。
僕はお金を受け取ろうとして手を出した。
「ほらよっ」
「えっ?」
一瞬、何が起きたのか理解できなかった。
千円札と小銭が僕の足もとに散らばっていた。
「数えなくても、ちょうどあるよ」
男は素っ気なく言うと、僕の存在など最初から眼中になかったかのように、デスクに片肘をついてラーメンを食べ始めた。
僕は少しのあいだ茫然とその場に立っていたが、はっと我に返ると、急いでお金を拾い集めた。
「ありがとうございました」
そう言うと、逃げるようにして部屋を出た。
僕は頭が真っ白になっていた。
エレベーターに乗り、検察庁のビルを出たところで立ち止まると、重たく息をついた。
僕の中で、やり場のない怒りがどんどん増幅していき、今にも大声を上げそうだった。
店に戻ったとき、ぼくはリュウさんに向かって声を荒らげていた。
「あいつ、お金を投げやがったよ!僕の足もとにお金を投げやがった!」
「いつものことだ、気にするな。お前はお客さんのところへ料理を届けて、ちゃんとお金をもらってくればいいんだ」
リュウさんは手を休めることなくそう言った。となりでいっしょに料理をしていた原田さんが顔を上げ、「お客さんにもいろんな人がいるからねえ…」と言い、ちょっと悲しそうな顔をした。
「くそっ!」
僕はテーブルを拳で叩いた。となりのテーブルで食べていた男性客が驚て振り返ると、怪訝そうな顔で僕を見た。
「あなた、ちょっとこっち来なさい!」
ジンさんが来て僕の腕を引っ張った。彼女に店の二階へ連れて行かれ、少しだけ説教され、そのあと慰めの言葉をかけられた。彼女も同じ経験をしたことがあるのだと言った。
「あの検察官、頭おかしい。あんなの人間じゃないよ!」
ジンさんは悔しそうに奥歯をかみしめた。
チャンがまだ店で働き始める前、ジンは毎日のようにオフィス街へ出前に行っていた。
地方検察庁へも出前を持って行った。そこで、チャンと同じような目に遭ったのだ。
検察官の男は彼女の足もとに小銭をばらまいた。
「なんてことするんですか!」
彼女は腹が立つというより、あきれてしまった。人を裁く立場にある検察官が、こんなくだらないことをするのかと思い、思わず溜め息が漏れた。
10円玉が一枚ころころと転がっていき、別の検察官が座っているデスクの下へ入ってしまった。
「すみません」
彼女は申し訳なさそうに言った。その検察官はすぐに椅子を引いて立ち上がり、「大丈夫ですか?」と声をかけてくれた。
彼女は四つん這いの姿勢でデスクの下へ潜り、10円玉を拾った。
「ご迷惑おかけしました」
彼女が立ち上がって振り返ると、あの検察官がいやらしい目つきでこっちを見ていた。
「ありがとうございました」
彼女は男から目をそらし、足早にその場を立ち去った。
その次も、そのまた次のときも、あの検察官はジンに嫌がらせをしてきた。
デスクの上に料理を置いたときに、背中や尻を触られたこともあった。
「やめてください!」と彼女が言うと、あの男は陰険な顔で睨んできた。
こいつの股間を思い切り蹴り上げてやろうかと思ったが、我慢した。そんなことをしたら、リュウさんたちに迷惑がかかるだけだ。しかも、相手は検察官だ。法的手段に訴えられたらどうにもならない。
こういうやつは何を言っても無駄だ。あまり深く考えないようにしよう。そう自分自身に言い聞かせた。
ところがしばらくして、ジンはとんでもない屈辱を味わうことになった。
ある日、別の検察官から注文があり出前に行ったのだが、大部屋を出てエレベーターを待っているときに、あの憎たらしい検察官とばったり出くわしてしまったのだった。
軽く会釈してエレベーターに乗り込もうとしたとき、いきなり腕をつかまれて引っ張られた。
「やめてくださいっ!」
彼女は叫んだが、検察官の男は離さなかった。近くには他に誰も人の姿はなかった。
エレベーターホール横の階段まで引っ張っていかれた彼女は、男から屈辱的な扱いを受けた。胸を揉みしだかれ、無理やりキスをされた。尻や股間にも手が伸びた。
彼女は恐怖に体をこわばらせ、その場から動けずにいた。
そのうち、男の手がTシャツの中やズボンに中にまで伸びてきた。彼女はじっと目を閉じていた。今にも気を失いそうだった。自分はこのまま死んでしまうのではないかと思った。
そのとき、エレベーターホールのほうで人の話し声がして、男の動きがぴたりと止まった。
男はそのまましばらく様子を窺っていたが、話し声とともに足音が聞こえてくると、慌ててその場から立ち去った。
彼女は階段の隅にうずくまったまま、しばらく動くことができなかった。
「大丈夫ですか?」
女性の職員が心配そうに声をかけてきた。
「大丈夫です…」
消え入るような声でそう言うと、ジンはゆっくりと立ち上がり、おかもちを手に持った。
足もとが少しふらついたが、なんとか意識を集中させ、手すりにつかまりながら階段を降りて行った。
店に戻ると、彼女は「ちょっとしんどいから寝る」と言って二階へ上がった。
ベッドに横になると、枕に顔をうずめ、声を押し殺して泣いた。
酷いことをされたのはそのとき一度だけだったが、そのあとも、あの男はたびたび嫌がらせをしてきた。さすがに警察に駆け込むことも考えたが、相手が検察官だと思うと、自分が無力に感じられた。
結局、彼女は今日まで被害に遭ったことを誰にも話さなかった。自分の中では、もう無かったことにしようと思い込んでいたのだ。
だが、自分にとって弟のような存在であるチャンまでもが嫌な思いをしたことで、再び怒りや悔しさが込み上げてきた。あの男をなんとかして懲らしめてやりたい。そんな思いが強くなった。
話を聞き終えた僕は、すぐには言葉を返すことができなかった。
怒りとか悔しさを覚える以前に、心の中が空っぽになったような感じがしていた。
「おーい、出前行ってくれるかー」
下から原田さんが声をかけてきた。
「行ってくる」
僕はふーっと息をついてから立ち上がった。
「間違っても、仕返ししようなんて考えたらだめよ」
ジンさんが落ち着いた声で言った。
僕は黙ってうなずくと、店へ降りて行った。
その後も、週に1回くらいのペースで検察庁へ出前を持って行ったが、そのたびに嫌な気分を味わった。あの検察官の男は、毎回お金を投げ渡してくるわけではなかったが、相変わらず態度は悪かった。僕のことなど相手にしていない感じだった。あの男が僕の顔をちゃんと見たことなど一度もなかった。
僕の我慢もいよいよ限界に達しつつあった。
あるとき、また検察庁へ出前を持って行くことになった。あの男の顔を思い浮かべるだけで怒りが込み上げてきた。
検察庁のビルに入り、あの男がいる大部屋へ行くまでのあいだ、僕の心臓はずっとバクバク鳴っていた。いつになく緊張していた。今日もまたお金を投げて渡すようなことをしてきたら、あいつを殴ってやろうと思っていた。
「こんにちはー、ハオハオでーす!」
必死に冷静をよそおい、僕はあの男のところへ向かった。
「八宝菜です、どうぞ」
デスクの空いたスペースに料理を置いた。
男は無言でラップをめくると、料理に鼻を近づけて匂いをかいだ。
男はときどき毒見でもするように、犬みたいに鼻をくんくんさせて匂いをかぐことがあるのだった。
男はひと口食べると、すぐにラップをかぶせ直した。
「いつもと味がちがう。持って帰って」
感情のない声で言った。
「え?いつもと同じ八宝菜ですけど…」
僕はできるだけ相手を刺激しないように言った。
「ちがう。持って帰って」
男は僕のほうなど見向きもせず、デスクの上の書類の片付け始めた。
「金は払うよ。作り直して持ってこなくていいから」
男はそう言って財布を取り出すと、「ほれっ」と言い、まるで鳩にエサでも与えるように、小銭を僕の足もとにばらまいた。
僕は怒りで体が震えた。悔しさで涙が出そうになった。
こいつを殴ってやろうと思った。
そのとき、女性の職員がやって来て、男に書類を渡した。
「アベさん、この書類お願いします」
そして僕に向かって軽く会釈をして立ち去った。
僕はなんだか肩すかしを喰らったようで、一気に気勢をそがれてしまった。
僕は小銭を拾い集め、八宝菜が入った器をおかもちに戻すと、「ありがとうございました」と小声で言い、そそくさとその場をあとにした。
「あの男は〝アベ〟という名前なのか…」
僕は心の中でほくそ笑んだ。それがわかっただけでも、少し気持ちが楽になった気がした。
店に戻ると、すでに次の注文が入っていて、ジンさんが僕の代わりに出前に行こうとしているところだった。
「どこ?」
「いつもの弁護士さんのところ」
「じゃあ、僕が行くよ」
ジンさんからおかもちをひったくると、僕は軽い足取りで店を飛び出した。
杉本弁護士事務所へ出前に行くのが、僕にとっては何より楽しみだった。
所長の杉本弁護士はすごくいい人だ。70代なかばくらいのおじいちゃんだが、元気で声も大きい。いつもニコニコしていて、好々爺といった感じだ。
所長さんの人柄がいいからか、他のスタッフの人たちもみな感じがよく、事務所内はいつも穏やかな雰囲気に包まれていた。
杉本弁護士事務所が入っているビルの近くまで来たとき、雨が降ってきた。僕は急いでビルの中へと駆け込んだ。
「お待ちどおさまー、ハオハオでーす!」
「おー、来た来た。待ってたよ。ここに置いて」
僕は所長さんのデスクの上にチャーハンと餃子を並べた。
「雨か?」
お金を受け取るとき、所長さんが僕の濡れた肩を見て聞いた。
「はい、ちょっと降ってきましたね」
窓の外を見ると、いつの間にか本降りになっていた。
「ちょうどいただきます。ありがとうございました!」
僕がその場を立ち去ろうとすると、所長さんが「ちょっと待ちなさい」と声をかけてきた。
「傘を貸してあげよう」
所長さんは席を立つを、入り口のところまで歩いてきた。いつものように左脚を少し引きずっている。たまに杖をついているときもあった。
「風邪ひいたらいかんからね」
そう言って、傘を持たせてくれた。
僕は丁寧に礼を言った。幸せな時間だった。
二日後、この日は土曜日で、仕事は暇だった。ほとんどの会社や役所が休みになるからだ。
昼過ぎに1件だけ出前を済ませると、次の注文も入っていなかったので、僕は店までの道のりをいつもよりゆっくり歩いていた。
弁護士事務所などが多く入っている古いビルばかりが建ち並ぶ通りにさしかかったとき、道端に人が倒れているのが見えた。
僕が駆け寄ると、倒れていたのは杉本弁護士事務所の所長さんだった。
「所長さん、大丈夫ですか?」
僕が声をかけると、所長さんは目を開け、「ああ、君か…」と言い、ゆっくりと起き上がろうとした。
「ああ、痛たたた…」
所長さんは顔をしかめて腰に手を当てると、その場にへたり込んでしまった。
周りを見たが誰もいなかった。僕は焦りながら携帯電話を取り出し、119番通報した。
いっしょに救急車に乗り、病院まで付き添った。
所長さんは、大学生くらいの若い男が乗った自転車と接触し、転倒したのだと話した。自転車はそのまま走り去り、倒れているところへちょうど僕が通りかかったのだった。
幸い、所長さんの怪我は軽く、心配するほどのことではなかったが、年齢のことを考えて、一晩入院することになった。
数日後、所長さんが「好好」へお礼を言いにやって来た。
店の人たちやお客さんの前で丁寧に礼を言われ、僕は気恥ずかしい思いだったが、嬉しくもあった。僕はこのまえ借りた傘を返し、礼を言った。
お客さんがみな帰ったあと、所長さんとリュウさん、僕とで、ちょっとした世間話をした。
そのとき、僕は胸の内に溜まっていたものをすべて吐き出してしまいたい衝動にかられた。
所長さんなら何か気の利いたことを言ってくれる気がした。
僕は、あの検察官のことを所長さんに話した。自分が受けた嫌がらせだけでなく、ジンさんのこともすべて話した。
「そんなやつがいるのか…。検察官の自覚に欠ける。いや、人間として問題のある人物だ」
所長さんは憤懣やるかたないといったように眉間にしわを寄せ、それから溜め息をついた。
「僕、あいつを殴ってやりたいと思いました」
僕が正直な気持ちを口にすると、リュウさんが「そういうことを考えるな」とたしなめた。
所長さんはうーんと低くうなると、「仕返ししたい気持ちはわかる。でも、絶対にやっちゃだめだよ。向こうは検察官だ。その男を殴ったりしたら、君は人生を棒に振ることになる。相手の思うつぼだ」と言った。
「でも…僕はあいつが許せないんだ」
僕は絞り出すように言った。
「わかった。私に任せなさい。私がなんとかしてあげよう。そんな男を検察庁に置いておくわけにはいかない」
「ほんとですか?」
「ああ。私にいい考えがある。君に嫌な思いをさせたその男を、いっちょ懲らしめてやろう。そういう男は、叩けば必ず埃が出るものだ」
そう言うと、所長さんは僕とリュウさんのほうへ身を寄せ、小声で話し始めた。
「すごい!」
その話を聞かされた僕は、思わず声を上げてしまった。
2か月後、杉本一蔵は地方検察庁を訪れた。弁護士としてではない。
彼は白い割烹着を羽織り、手にはおかもちを提げていた。
「ハオハオでーす!」
彼はアベという検察官のデスクへ行くと、八宝菜が入った器を置いた。
アベはうさん臭そうな目で老人を見ると、「ふんっ」と鼻で笑い、ラップをめくって匂いを嗅いだ。
「毒など入っていませんよ」
老人がニコッと笑うと、アベは不愉快そうに口もとをゆがめた。そして財布から小銭を取り出し、老人の足もとへ投げた。
「あらまあ、お金を投げるなんて罰当たりですなあ。こういう行いが、そのうち災いを呼びますよ」
老人の言葉に、アベがすかさず振り向いた。
「じじい、余計な口をきくと、ただじゃ済まねえぞ」
周囲を気にして声を押し殺しながら、アベは怒りを露わにした。
「ほおぅ、ただじゃ済まないとは、一体どういう意味ですかな?」
老人は小銭を拾い集めながら聞き返した。
「ここがどこかわかってんのか?お前を犯罪者に仕立て上げることくらい簡単にできるんだぞ」
アベは口の端から絞り出すように言った。
「そうですか。検事さんというのは、さぞお力がおありなんでしょうねえ」
老人はそう言ってまたニコッと笑うと、「ありがとうございました」と頭を下げ、ゆったりとした足取りでその場から立ち去った。
プライドを傷つけられたアベは、怒りに体を震わせていた。
あの老人を暴行罪で起訴してやろう。ついでに店もつぶしてしまえ。
アベは口元に下卑た笑いを浮かべると、八宝菜が入った器を給湯室へ持って行き、中身をゴミ箱の中へぶちまけた。
権力を手にした者が勝者なのだ…。
これまで常に思ってきたことを、改めて自分自身に言い聞かせた。
墓穴を掘ったのが自分のほうであることに、彼はまったく気づいていなかった。
3日後の朝、アベは登庁するとすぐに直属の上司に呼ばれ、検事正室へ行くように言われた。
検事正というのは地方検察庁のトップだ。日頃、顔も見ることのないような人物だ。
なぜ自分がそんなところへ呼び出されるのか。アベは不安になった。
「どうぞ、入ってください」
ノックをすると、すぐに返事があった。
アベは恐る恐る扉を開け、「失礼します」と言いながら中へ入った。
「アベ君ですね。こちらへ来てください」
応接セットの向こう正面に座っていた検事正の真田が、立ち上がって言った。
こちらに背を向けて、もうひとり白髪頭の人物が座っていた。
検事正の前へ進み出たとき、アベは小さく「あっ」と声を出してしまった。
応接セットのソファーに、中華料理屋の出前の老人が座っていたのだった。
「この前はどうも」
老人がニコッと笑った。
「アベ君、この方を知っていますね?」
「は、はい。出前の…」
「君は、この方に失礼なことをしたのではないかな?」
検事正の声に力がこもった。
「い、いえ、べつに…」
アベは視線を落とすと、横目でちらっと老人のほうを見た。
「この方をどなただと思っているのだっ!」
穏やかだった検事正が声を荒らげた。アベはビクッとして、とっさに姿勢を正した。
「この方は、元最高検察庁検事総長の杉本一蔵氏だっ!」
「ええっ!」
驚きのあまり、アベは後ろ向きにひっくり返りそうになった。
「君の悪事はすべて調べがついているぞっ。叩けば埃が出るとは正にこのことだ!」
検事正は厳しい表情でアベの顔を見ると、デスクの上から一枚の用紙を取り、ひとつひとつ読み上げていった。
「女性事務官への暴言、セクハラ行為。風俗店の女性に対するわいせつ行為、いや、強姦といったほうが正しいかな? 取り調べ中の被疑者への暴言、暴行。そして極め付きは下着泥棒…」
検事正は大きな溜め息をつくと、「情けない…」と吐き捨てるように言った。
アベはこれまでに数々の犯罪行為をおこないながら、検察官という立場を利用して、それらをすべてもみ消してきたのだった。
それらを事実を調べ上げ、検事正の真田に教えたのは、他ならぬ杉本一蔵だった。
証拠も揃っており、アベはもはや言い逃れできる状況ではなかった。
「君には後日、私のほうから正式に処分を言い渡す。今日中に荷物をまとめておいたほうがいいだろう。襟のそのバッジも、もう必要ない」
検事正はそう告げると、ゆっくりとソファーに腰を下ろした。
「もういい。出て行きなさい」
アベはこくりとうなずくと、視線を落とし、足を引きずりながら部屋を出て行った。
「杉本先生、これでよろしかったでしょうか?」
「うん、いいでしょう」
老人は大きくうなずくと、ニコッと笑った。
「出前行ってきてー。また検察庁」
客が帰ったあとのテーブルを片付けていると、ジンさんが声をかけてきた。僕は嫌な気持ちになった。
出来上がった料理にラップをかぶせ、おかもちに入れると、僕は店を出た。
「ハオハオでーす!」
いつもの大部屋に入ると、ひとりの男が手を挙げ、「こっちこっちー」と言った。
アベではなかった。僕はほっとした。
「ありがとうございましたー」
お金を受け取り、その場を離れたあと、ふと、いつもアベが座っているデスクのほうへ目をやった。アベの姿はなく、デスクの上もがらんとしていた。
大部屋を出てエレベーターに乗ったとき、僕ははっとした。
所長さんが何かしてくれたに違いない。アベがいなくなったのは、きっとそのせいだ。
僕は気持ちが軽くなった。検察庁のビルを出ると、思わず走り出してしまった。
次の日は土曜日だった。昼の1時を過ぎると店内に客はひとりもおらず、僕はジンさんとふたりでテーブルに腰かけてテレビを見ていた。
「あっ」
CMが明け、画面がワイドショーに切り替わったとき、僕は思わず声を上げた。
所長さんが出ていたのだ。
「杉本一蔵。弁護士。杉本弁護士事務所所長。元最高検察庁検事総長」とあった。
様々な人権問題に取り組んでいる弁護士として紹介されていた。
所長さんが僕を助けてくれたんだ…。僕は嬉しくなり、胸に熱いものが込み上げてくるのを感じた。
ジンさんが「所長さんがテレビに出てるよー」と声をかけ、リュウさんと奥さん、松田さんもやって来て、どこか誇らしげな表情でテレビの画面に見入っていた。
僕はテーブルを離れると、店を出て、大きく伸びをした。
こんなに清々しい気分を味わったのは、日本へ来てから初めてだった。
きれいに晴れ渡った空を見上げていると、不意に涙があふれてきて、ゆっくりと頬を伝って落ちた。
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