【実録風俗業界裏話】風俗店員はキャストを食えるのか
平先からの謝罪
「・・・」
平先の言葉に私はすぐに返事を返せなかった。
何で落ち込んでるのか、なんて言われても一言で回答できるほど私の考えはまとまっていなかったからだ
応えに悩んでいる私を見て、平先はタバコを灰皿でもみ消しながら口を開く
『まぁ、それは後で聞く事にするわ。俺も話があって来たし。』
テーブルに運ばれてきたコーヒーを一口だけ飲むと、平先は続けた。
『この間は本当にごめん。お前の気持ちも何も考えてなかった』
『お前の事、嫌いになったわけじゃないんだ。それを伝えたくて…。』
私は目を真ん丸にする他無かった。
あれだけ友達達に迷惑をかけていた私に対して、謝罪するなんて思いもしなかったから。
確かに届いた気持ち
あっけにとられる私に構わず、彼はさらに話を続ける。
『もし何か困ってるなら、俺に相談してくれ。』
『夜の仕事なんてしたことないから役に立つかは分からないけど、出来る限りの協力はするからさ。』
彼の眼はいつになく真剣で、真っ直ぐな眼差しで私を見る。
『だから、誰彼構わず仕事に引き込もうとするのはもう辞めろ。俺が手伝うなら百人力だろ?笑』
衝撃的だった。自分の事しか考えていなかった私よりも、平先はずっと聡明である。
私の気持ちを考えつつ、他の友人達に配慮した方法を考え出した、それも自己犠牲という選択肢を選んで。
彼は私の友人には勿体ない位、出来た人間だ。
そんな彼の言葉に、瞳の奥から熱い何かが込み上げた。
それは瞼を閉じると静かに頬を伝ったのである。
考えがまとまった瞬間
『ちょっ!お前何で泣いてんの!?笑』
焦りながらも少し笑い気味に平先は私を見た。
「泣いてねーよ!」
『いやいや、目真っ赤ですけど〜(笑)』
「うるせぇ!!笑」
深夜の客が少ないファミレスに、けらけらと私達の声が響く。
昔から馬鹿話をしながら腹を抱えて笑いあった、かけがえのない大切な友人。
私はこの時、胸につかえていた何かが取れた気がした。
「俺こそ本当にごめん。」
『お、どうした?』
「やっぱ俺間違えてたよ。お前の言う通りだった。」
平先は私の話を聞きながら、タバコに火を付ける。
「人間として最低ってお前に言われてから、ずっと考えてたんだ。」
一息ついて、言葉を発する。
「仕事、辞めるよ。」
大切な友人に私は救われた
『お前はもうそれで後悔しないのか?今までずっと頑張ってきたんだろ?』
タバコを持ったまま、平先は私に問いかけてくる。
「うん、もう大丈夫。ありがとな。」
吹っ切れた様子の私を見て平先も安心したのだろうか、前のめりだった体制から背もたれへと体重を移した。
『そんじゃ、もう夜も遅いし、帰りますかぁ〜』
「おう、そうだな」
ファミリーレストランを出て、家に帰るまでの間、また沈黙が流れた。
でもそれは先程の様な気まずい沈黙ではなく、心地の良い沈黙。
信頼し合える友人だからこそ、多くを語らずとも分かり合える、そんな証。
私は自分にとって大切なものが何なのかを、ようやく理解する事が出来たのだ。
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